僕は去年、生まれて初めて大腸ガンの告知を受け、あー僕はもう死んじゃうのかな、とネガティブに考えていました。なんのことはない、今の医療では大腸ガンなんて、すぐとれてしまうらしいですね。僕のメンタル弱すぎ?

まあそれはいいんですが、寝込んでいる間に「これはネタにならないか」と考え始めたわけです。なんでもブログのネタにするのが杉江流なのですが、当時はネットを大がかりなハッキングに遇い、ブログ一つ書けない悪夢のような生活を送っていました。

で、回復したら何を書こうか、と寝る前に考えていたのです。一番書きたかったのは、僕の大腸内視鏡手術をしてくれた、厚生中央病院の消化器外科の先生です。ご存じのように大腸内視鏡というのは、なかなか屈辱的な体勢を取らされるわけですが、そんなことは言っていられません。本当に名医でした。

別のクリニックで消化器内科の先生と話したときは、いまいち話が合いませんでした。僕は下痢気味なんですけど、と主訴を述べたら「あら、便は出るより出ない方が深刻なんですよ。大丈夫!」と言われました。「じゃあ先生は満員電車の中で、下痢と便秘になるの、どっちがいいですか?」と訊いたら黙ってしまいました。

厚生中央病院の外科は違います。もはや職人と言う方がシックリくるかも知れません。若い女性の外科医でしたが、見事な内視鏡さばきで僕の大腸癌を7つも取ってくれました。

かくして僕は消化器系の病気はすっかり治ってしまったわけですが、その消化器外科の名医が言われたことが、ずっと頭に残っています。

「人間の身体はアルゴリズムでいうとドーナツ型なの。決しておまんじゅうではないのよ」

そう。ドーナツ型という例えが良くないとすれば、ストロー型、水道ホース型、ミミズ型、いろいろ考えられますが、要するに真ん中に穴があって、入り口と出口がある。ドーナツだって、びゅーんと延ばしていけば、ストローになります。

つまり人間の消化器というのは、身体の外部ではなく、ドーナツの穴なんだ。ストローの穴なんだ。と考えればすべてが腑に落ちます。それも極めて優秀なストローです。

そんな器官ちょっとありません。おしっこは腎臓で血液を濾過したものだから、出口はあっても入り口はありません。肺も膨らんだりしぼんだりしますが、入り口も出口も同じです。なんと消化器だけが、入り口と出口を持つ、長大なパイプなのです。

食道、胃、小腸、大腸、直腸と総延長はかなりの長さになるそうですが、我々にとって気になるのは、やはり入り口と出口です。ズバリ、口と肛門です。口と肛門は極めてデリケートにできていて、例えば口は好きな人とキスするときに触れ合います。おいしい食事を味わうのも口です。入り口としてはものすごく敏感にできていると思いませんか。

肛門だってその敏感さにおいては、口に負けないくらいデリカシーの産物です。一瞬にして、気体か固体か、はたまた液体か、見分けてくれます。おならをしたくなったとき、それが気体である、という判断を見事に伝えてくれます。だからこそ僕たちは安心してブーッとへをこけるのです。

僕は2023年の前半を口腔の疾病で悩まされ、2023年の後半を大腸の疾病で悩まされました。病院では下からの内視鏡と、上からの内視鏡を使って、ほぼ完璧にこのチューブの異変を治していただきました。

食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸と地味に活躍してくださっている消化器の方々には悪いのですが、やっぱりトラブルが身近に感じられるのは、入り口と出口でしょう。我々にとって知覚しやすいからです。

で、この消化器系がどんなに素晴らしい仕事をしてくれているかというと、入り口から入ったものを、そのまま出口から出すのではない。そこがストローや水道パイプと違うところです。水道パイプは、入り口から水を入れれば、出口からも水が出ますよね。

同じパイプでも、水道パイプとは雲泥の差がある、我らが消化器官。なんと入り口から入れた物がなんであれ、すべて均質な立派なウンコにして出してくれることです。

我々は例えば口からおせんべいを食べたりしますよね。あるいはお味噌汁を飲んだりしますよね。でももし出口から、おせんべいがそのまま、あるいはお味噌汁がそのまま、出てきたらどうでしょう。

嫌ですよね。僕は絶対嫌です。

僕たち人間の身体は、何を食べようと、すべて均質なウンコにしてくれて、1日か2日に一度、ほどよい堅さのりっぱな物体にして排泄してくれるのです。これはもうミラクルとしか言いようが言いようがありません。

おせんべいがそのまま出てきたら肛門は痛いし、お味噌汁がそのまま出てきたら下痢ピーです。何を食べようとすべて適度な堅さに揃えて、出口まで持っていってくださるのは、本当にありがたいことです。

ザ・ミラクル・チューブ

消化器系に関するみなさんの認識が、少しでもわかりやすくなれば、それに勝る喜びはありません。

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