(4)乗り物としての象
- 80年代のタイ秘境の旅(その1)執筆
- 80年代のタイ秘境の旅(その2)休暇
- 80年代のタイ秘境の旅(その3)取材と好奇心
- 80年代のタイ秘境の旅(その4)乗り物としての象
- 80年代のタイ秘境の旅(その5)アカ族の村
- 80年代のタイ秘境の旅(その6)生阿片
ルポルタージュ・タイ。このシリーズも今日で4日目になりました。ブログとしては時系列が逆さまですが、だんだんとコアな部分に踏み込んでいきます。
タイを訪れたのは、友人たちのカップルと、私と当時のガールフレンド、計4人でした。タイ北部の少数民族がどんな暮らしをしているのか、私は一人でも行きたいと譲りません。我々はチェンマイに滞在していて、チェンマイはバンコクよりずっと快適に暮らせる地域でした。
我々はチェンマイにあるツアー会社に出向き、私の希望を伝えました。タイとミャンマーの国境あたりにある少数民族はたくさんあり、彼らはあまり都会から来る観光客を受け付けていないが、いくつかの村では可能性はある。というのがツアーコンダクターの返事でした。
窓口の女性は、近くにいた10代くらいの少年を呼び、しばらく話したあと答えました。「彼ならアカ族の村に案内してくれるわ」私はそれでいい、と申し込みました。アカ族だかリス族だかちょっと聞いたことはありましたが、どの民族が何族かなんて見分けがつきません。
あとは交通手段です。ツアーコンダクターがサラサラと紙に書いてくれた旅程表を見ると、片道15時間もかかるようです。
チェンセンまで「On Bus 5 hours」そこから「On Boat 3 hours」そして「On Elephant 7 hours」
何なんですか、この最後の7時間は? と訊くと「象は象ですよ。あの手のジャングルでは、象は最も一般的に使われている乗り物です」と、まるでタクシーにでも乗るように、事もなげに彼女は言ってのけました。これを聞いて、友人達二人は「とんでもない。杉江くん一人で行ってきたら?」と辞退し、チェンマイに残る方を選びました。
ガイド役のバムくんは「ちゃんと椅子も着いているので快適ですよ」と言って、結局僕と、当時のガールフレンド二人だけが、このアドベンチャーに挑むことなったのです。今思えば、ついてきてくれた女性も、大した度胸だと思います。
象で移動する旅もいいんじゃない?
無事にBoatで川をさかのぼること3時間。10頭あまりの象が、気持ちよさそうに水浴びをしているのを目撃しました。近くにいた数人の男性も、川沿いにたむろしていました。たぶん象使いなのでしょう。それらの象には椅子らしきものは、着いていませんでした。
やがてBoatから下りると、バムくんが一頭の象を連れてきました。それには二人乗りの竹で作ったようなベンチシートが取り付けられており、象使いはかなり前の方に直接またがっていました。
「これから長い旅をする相棒だよ。仲良くしておいた方が良い」とバムくんが言うので、僕はスキンシップをはかるため、とりあえず馬に接するように、ゆっくり近づきました。そしてバナナ一房を、その象に食べさせました。こんなんで良いのかな?とバムくんに尋ねると、大丈夫ですよ、象の方は慣れていますから。と言うことなので、さっそく象に乗ってジャングルへと分け入っていきます。
象に乗って初めて分かったことは、4本足というのは、実にジャングルに向いているのです。かなり急ながけも、前足を使って器用に登ったり下りたりできます。そして崖っぷちの道幅が60センチから70センチしかない細い道になった時です。身体の幅が1メートル以上ある象が、どうやってこの細道を行くのか。
なんと4本の足を前後に1列に並べ、足1本の幅だけ使って器用に細道を行くのです。なるほど、その手のやり方があったのか!
私は目から鱗が落ちる思いでした。4本足をあなどってはいけない。それまで私は4輪駆動車のように、4つの足を常に地面に接しているイメージでしたが、動物の4本足は複雑に使い分けることで、実に器用に移動ができるのです。
象での旅はまだ続きますが、今日はこれくらいにしておきましょう。
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