それでもジャニー喜多川は天才だった？

長年にわたるジャニー喜多川の性加害は、性交同意年齢16歳を下回る中学生にしてきたこと、立場の優位性を利用した強姦だったことを含め、絶対に許すことのできない悪質な犯罪です。事務所が謝罪してすむ問題ではありません。

少年性愛者だったことはLGBTQの観点から、実行に移さず本人が夢想するだけなら問題ないでしょう。問題は彼が実行に及んだこと。嫌がる少年に対して、圧倒的な立場の優位性をもって、強要してきたことです。被害者達に深い心の傷を負わせた罪は、本人が物故者である今、どう償わせればいいのでしょうか。

それよりも問題にしたいのは、この事実を知りながら、ジャニーズ事務所のタレントを引き上げられることを怖れて、全く報道しなかったテレビ局をはじめマスコミ各社の忖度です。犯罪を知りながら報道しないことは、ジャーナリズムの根底に関わる大問題です。相手が誰であれ、悪いことは悪い、と報道するべきです。それをしないことによって、ジャニー喜多川の犯罪を黙認した、いや助長した幇助の責任があります。

僕自身、現役時代にこの事実を噂として知りながら、ジャニーズ事務所に出演依頼をしたこと。そして何ごともなかったかのように、ジャニーズ所属のタレントたちを画面に出した経験があります。そんな自分に自戒をこめて今この記事を書いています。本当に申し訳ございませんでした。

しかし被害者であるタレントたちに罪はありません。私が一緒に仕事をしたジャニーズのタレントたちは、一様に礼儀正しい好青年でした。歌や踊りだけではなく、人間としてもよく教育の行き届いた、極めて優秀な人材だと感じました。こちらの演出意図をくみ取り、期待通りの役をこなすセンスも抜群のタレントたちばかりで、なかなか他の芸能事務所では見つからないレベルの高さでした。

ところで皆さんは子役のオーディションの経験はありますか。こども番組の担当ディレクターだった僕は、年に1回は子役のオーディションをしていました。書類選考をすませた300人ほどの小中学生を、一人ずつリハーサル室に呼んで、4人から5人のディレクターとプロデューサーが見守る中、自己紹介や簡単な演技をしてもらい、僕たちは書類に○、✖️、三角を着けていきます。

300人という数は、大変な数です。一日に10人オーディションをするとして、30日はかかります。義務教育中ですから、放課後または土日、それも児童福祉法で夜8時以降の児童労働は禁じられています。正直言ってオーディション期間中は僕たちディレクターにとって地獄の日々でした。

女子はわりあい簡単に選ぶことができます。誰が見ても可愛いものは可愛いし、一見して華があります。小中学生といえども児童劇団に所属する女子たちはませていて、保護者に聞いても将来女優を目指す、という目的のある子が多いのです。僕が最初に選んだ女子の一人は、安達祐実さんでした。

それに比べて、男子はまったくわかりません。小中学生の男子など、おくてでボーッとしていて、誰がテレビ出演に向いているか、判断材料がないのです。保護者に聞いても「人見知りする子なので、劇団にでも入れれば治るかと思いまして」ということがしばしばありました。それでも選ぶのが僕たちディレクターの業務ですから、なんとか魅力を探して、苦労して選びました。

そんな頃に聞いた噂が、ジャニーズ事務所の入所オーディションの話です。噂なので本当かどうかわかりません。ジャニーズの場合、何百人という男子小中学生を体育館のような広い場所に集めます。そこへジャニー喜多川が現れて、歩いて見回りながら、「ユー」、「ユー」、「ユー」と数人のこどもに声をかけます。そして、「今呼ばれなかった子は、全員帰ってよろしい」と言ってオーディションは終わりです。30分くらいで終わるそうです。

その噂を聞いて、毎年のように子役の男子選びに苦労していた僕たちは、「なんでそんな簡単に選べるんだ？」「ジャニーさんは少年選びの天才なのか？」と驚きました。想像もつかないレベルの話で、理解に苦しみました。そうして選んだ少年達が、次々にデビューするのを見て、きっと彼には常人にはわからない天賦の才があるのだろう、という結論に達しました。

もちろん彼にどんな才能があろうとも、忌むべき性的暴行の加害者であることを、1ミリも許すことはできません。その犯罪を見て見ぬ振りをしてきた事務所、そしてマスコミの責任は、極めて重いものです。芸能界には叩けば埃の出る話が、まだまだある予感がします。これを単なるスキャンダルで終わらせること無く、徹底的に膿を出し切りましょう。

悪いものは悪い。法廷の場で追求して頂きたいものです。今回は注意を引きつけるため、あえて忌むべき犯罪者を擁護するようなタイトルを付けましたが、僕の自戒を込めて断罪したい気持ちと怒りをどうぞご理解ください。

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