それでもウクライナに徹底抗戦を求める理由

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ロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻開始から1年。ロシア国民の75パーセントの支持を受け、戦闘の正当性を主張するプーチンに対し、ゼレンスキー大統領は徹底抗戦の姿勢です。ゼレンスキーは「2月24日、何百万人もの人が白旗ではなく、青と黄色の旗を、逃げ出すのではなく立ち向かうことを、抵抗し、戦うことを選択をした。痛み、悲しみ、団結の1年だった。私たちは不屈だ。私たちは2023年が勝利の年となることを知っている」と述べました。

一歩も引かない双方ですが、戦死者も増えています。ロシア側は「ワグネル戦闘員を含めて兵士175,000人 – 200,000人が死傷(2023年2月17日発表、イギリス国防省)」。ウクライナ側も兵士100,000人の死傷に加えて、民間人の被害が多数出ています。国連によると「民間人7,199人が死亡、うち438人は子供(2023年2月20日発表)」ということで、ウクライナから国外に逃れた難民は1,300万人を超えています。

これを受けて、多様な意見が出るようになりました。最も安直なものは「双方ただちに戦闘をやめ、停戦合意すべきだ」というエセ平和主義者の意見です。ロシアの侵略を認めたまま停戦したら、その後のウクライナ東部をどう処理するのか。何も考えていません。「強盗に押し入られた時、抵抗するとケガをするから、おとなしく金品を渡した方がいい」と同じレベルの思考です。

ヨーロッパ・アメリカといったNATO諸国はウクライナに対して、さらなる武器弾薬の供与を強めていますが、これについても「火に油を注ぐことになり、戦闘の激化をもたらす」と批判する、中国などエセ平和主義者の意見があり目も当てられません。西側がウクライナへの軍事支援をやめたら、軍事力で圧倒的に有利なロシアは、いとも簡単にウクライナ全土を占領してしまうでしょう。あってはならないことです。

僕はこの戦争は「まっとうな国際秩序」を守るための戦闘だと考えています。まっとうな国際秩序とは、何度もくり返しますが、

  • 力による一方的な現状変更の試みは絶対に許されない

というシンプルなものであります。これが崩れたら、中国が台湾や沖縄を攻め落とすことも許されてしまいます。WWII以降の国際社会は、19世紀や20世紀にあったような、帝国主義を許しません。

隣国に向けて国土をグイグイと押し広げるような侵略は許されないし、「過去にウクライナはロシアと一体だった」というような、歴史を根拠にした理屈も通用しません。歴史を根拠にする理屈が通用するなら、「過去に朝鮮半島、満州、台湾は日本と一体だった」という理屈が通用することになり、秩序はメチャクチャです。いろんな国が口々に歴史を根拠に「ここも過去に我が国の領土だった」と言い出したら世界はどうなるでしょう。想像するだに恐ろしい、決して許されない論法です。WWII以降の国際安全保障は現状の平和維持を基本としています。

それなのに、なぜプーチンはこんな時代遅れの侵略戦争を始めたのでしょうか。ソ連時代にKGBのスパイだったプーチンは、ベルリンの壁崩壊を東ドイツの秘密警察として目撃し、屈辱的な体験として味わっています。東西冷戦の終結をめでたいことだとする、我々西側の価値観とは、全く相容れません。プーチンの頭の中には、今でもスターリンの築いた偉大なるソビエト連邦が存在するのです。いや、彼の執務室にはピョートル大帝の肖像画が掛けられているというから、偉大なるロシア帝国が存在すると言うべきかも知れません。

ロシア帝国的価値観、ソビエト連邦的価値観から彼はNATOを敵視し、すなわちアメリカを敵視するのです。ウクライナ侵攻の理由も、まさにそこにあるわけです。しかしロシアの国力はあなどれません。天然ガスなどの地下資源に恵まれ、小麦など食料も自給するロシアは、たび重なる経済制裁にも今のところビクともしていません。エネルギーと食料を自給できない日本などは、経済制裁で貿易を止められたらいちころですが、ロシアはその点まだまだ余裕があるようです。

逆に経済制裁をしている西側世界の方が、エネルギー価格の高騰、食料価格の高騰などで苦しい思いをするはめになっていますが、ここは我慢比べです。経済制裁は緩めてはなりません。この機会にエネルギー安全保障、食料安全保障などを考える、よいきっかけにすべきです。国際安全保障は武力だけでは語れません。単純に軍事費を倍増すれば良い、という昨今の風潮はいかがなものかと思います。

この戦争の不気味なところは、ウクライナを戦場とした、ロシア帝国主義とNATOの代理戦争だというところです。さらに言えばロシア、中国、北朝鮮といった反米独裁主義国家群と、アメリカやEU、日本といった自由と民主主義の国家群が、地球を二分してぶつかり合っているということです。既にこのような世界大戦レベルの対立が存在する事実から、我々は目を背けてはいられません。

もちろん直接対決を避けるため、NATO軍が動くことは今のところありません。しかし気の毒なことに代理戦争の戦場となってしまったウクライナでは、世界大戦レベルの重圧がゼレンスキー大統領の肩にかかっています。血を流すのはウクライナ人であり、本当に申し訳ないと思うのですが、1年前と1ミリも変わらない国境線に戻るまで、しっかり頑張って欲しいものです。

ロシアではプーチン大統領が厳しい報道管制を強いて、世論をコントロールしています。ロシアには報道の自由がありません。ここが僕としては最も個人的にこだわりたいポイントです。中国や北朝鮮に報道の自由がないことは知っていましたが、ロシアよ、お前もか、と言いたい。ペレストロイカとグラスノスチ(情報公開)ではなかったのか。新聞やテレビをコントロールして国民に情報を与えず、一方的に戦争を正当化するプーチンに言いたいです。ウクライナ人に謝る前に、まず自国民に謝れと。

善良なるロシア国民たちが、プーチンによって情報をコントロールされ、誤った報道によって洗脳されている状況こそが悲劇です。ロシア国民の75パーセントがこの侵略戦争を支持している。まるで太平洋戦争中の大日本帝国のようです。流されたウクライナ人の血はもちろんのこと、流されたロシア人の血にも責任を取るべきです。プーチンの戦争は、プーチンの処刑によって終わってもらいたい。願わくばロシア国民の手による処刑で。それが無理ならジェームズ・ボンドに頼むしかないかも知れません。

一部の帝国主義の独裁者によって、国中が誤った方向へ向かい、他国を侵略する。これは悲劇です。20世紀前半の日本の姿と、今のロシアの姿が二重写しになって見えます。ロシア国民の中にも、わずかですがプーチンを疑い、国際世論に耳を傾け、反戦を訴える人々がいます。その声が大きくなり、やがては世界を変えてくれるのではないか。淡い期待をせざるを得ません。

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1 thought on “それでもウクライナに徹底抗戦を求める理由

  1. 戦場の事実を知るロシア軍兵士が、何らかのきっかけ(大敗)で、退却のドサクサに紛れてクレムリンを囲んでくれないかなと思います。

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