ジョー・バイデンにCongratulationsの電話を
アメリカ合衆国大統領選挙は、まだどのメディアも当確を出していません。郵便投票の開票作業に時間がかかっているからです。
今(日本時間の6日正午)の時点で、アリゾナ州でバイデン氏の勝利を報じたメディアはAPやウォール・ストリート・ジャーナル紙、FOXニュースで、他のメディアは保留しています。
仮にアリゾナ州をバイデン氏が取ったとして、速報値は以下のようになります。
ネバダ州かジョージア州か、そういった激戦のいずれかの州で勝利を勝ち取れば、ジョー・バイデン氏は勝利宣言をしても良さそうに見えます。まさに王手といった状況です。
しかし大統領選挙は勝利宣言によって決まるのではありません。まずメディアが当確を発表し、それを受けて選挙に負けた候補者が、勝者に電話して「Congratulations(当選おめでとう)」と言うことによって決定します。すなわち敗北宣言によって決まるのです。
このアメリカの民主主義の良き伝統に基づいて、アメリカ合衆国は分断を防ぎ、選挙後は両候補が握手して、気持ちよく政治を始めることができてきました。
フロリダ州の怪しげな開票結果で揉めたあげくに決まった、アル・ゴア氏とジョージ・ブッシュ氏の時も、最終的にはゴア氏がブッシュ氏にCongratulationsと電話して決着しました。もちろんヒラリー・クリントン氏もトランプ氏にCongratulationsを言っています。
この良きアメリカの伝統が、今回ばかりは壊れてしまうのではないかと、それを僕は非常に危惧しています。どちらが勝つにせよ、Congratulationsだけは必ず言ってほしいと思います。
特に今回のようにアメリカ合衆国市民が真っ二つに分かれ、激しくぶつかり合って史上最大の分断を引き起こしている時だからこそ、選挙後にノーサイドのホイッスルが欠かせません。互いに禍根を残さず、一つにまとまって次の4年間を安定した4年間にする必要があるのです。
しかしトランプ氏は、そう簡単にジョー・バイデン氏にCongratulationsを言うとは思えません。むしろ最後まで言わないかも知れない。それは悪夢です。民主主義のお手本だったアメリカが崩壊し、内戦になりかねない混乱をもたらすことになります。
トランプ氏は既に今回の開票結果自体を否定し、不正があったとして法廷決着に持ち込む発言をしています。往生際の悪いことこの上ない言動です。連邦最高裁には故ギンズバーグ判事の後任に、トランプ側の判事を入れているから、法廷で勝てると考えているのでしょう。
アメリカ合衆国大統領が法廷などで決まって良いはずがありません。あくまでも選挙の投票結果に基づいて、民意で決まるべきものです。民主主義の基本中の基本です。
さらにトランプ氏は市民の分断を煽る、非常に危険な発言もしています。トランプ側の市民団体中最も過激で、銃を持って威嚇を続ける「プラウド・ボーイズ」に対して、とんでもない指示を出したのです。
公開討論会の席上で、司会者から「プラウド・ボーイズに言いたいことは?」と質問されたトランプ氏は(プラウド・ボーイズの名を出したのはバイデン氏だったが)こう答えたのです。
Stay back, Stand by.
(さがって待機しろ)
その発言を聞いたプラウド・ボーイズは、準備しておいていざとなったら戦え、という意味だと解釈して、より過激な行動を取るようになりました。今のところ銃撃戦こそ起きていないようですが、一触即発の状態です。
そんなトランプ氏が、はたして平和的かつ紳士的に選挙結果を受け入れるのか。甚だ疑問なのであります。
まだ開票中であり、ジョー・バイデン氏の当選が決まった訳でもないのに、早くもトランプ氏の落選した時の行動が、気になって仕方がありません。それは民主主義の代表国であるアメリカが、民主主義を崩壊させる瞬間を、絶対に目にしたくないという強い願いでもあります。
長引くかも知れない開票作業ですが、じっくりと票を数え続けてもらいたいです。そして民主的に次期大統領が決まったら、落選した候補は速やかに電話でCongratulationsを伝えて、分断を解消してもらいたいものです。
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