増税延期を選ぼうとするアベノミクスの罠
3月11日の日本経済新聞の一面は、大震災の後から、日経平均株価が8千代→1万6千円代、失業率の大幅低下(主に派遣が増えたため)、等、アベノミクスが成功した、と安倍首相の自信に溢れた内容でした。しかし、7日後の読売新聞の記事では、一転。安倍首相は景気減速に配慮して、また、増税を延期する方向で検討を始めた、との内容でした。一番の目的、憲法改正に向けて、支持率が一気に下がる事を懸念しているのでしょうか。
内閣府の公開資料
「経済財政運営と改革の基本方針2015について」平成27年6月30日 閣議決定、P26より抜粋
(3)機動的対応
平成29年4月の消費税率10%への引き上げに向けては、その円滑な実施に必要とある経済環境を整えるため、必要に応じ機動的に対応する。
この(まわりくどい)文章の意味は、経済環境が整わなかったら増税しない、という意味です。軽減税率が決まり、震災後から、だいぶ株価も上がったと自慢されていたのに、安倍首相はまた増税を引き伸ばす予定です。1989年に消費税が導入されましたが、所得税と法人税の減税が同時期で、純増税ではありません。財政赤字が見えてきた1980年代から、約30年間、減税と増税が何故かセットでした。しかし、2012年8月に、3党合意を取り付け、純増税案を可決した元野田首相との約束はどうなったのでしょうか。1981年以来の純増税です。3党合意同窓会で、何も言えずに下を俯く谷垣さんに野田元首相の残念な様子が、昨年末の日経新聞の記事に書かれていました。増税したら、歴代首相の支持率が一気に下がり、倒閣につながるのが傾向です。
アベノミクスのテーマは「経済再生なくして財政健全化なし」です。一見立派に見えます。しかし、増税を引き伸ばした自民党の怠慢ではないでしょうか。注1) さらに、政府(お上)を信用できない、政府に対する不信任感、それは、約70年前まで戦前の日本は、人を人権のない人とみなす特攻隊まで生み出した背景、全体主義であったから、と私は考えています。
また、最近まで、アベノミクスが成功した理由は、大きく2つの点があると思います。
①日本と関係の深い、他国も景気がよく、時期と運がたまたま良かった。
②非伝統金融政策(禁じ手である日銀の国債買いオペレーション。その分は債権放棄、日銀は買い受けた国債の支払いを政府に求めない)しても、ドルが基軸通貨なので、円にさほど興味を持たれなかった。
②に関しては、誰も損をせずに莫大な借金を減らしているという意味では、評価されるものだと、私は考えています。注2)
しかし、「GDP目標600兆円」のように、計算方法SNA2008に変更。さらに原発処理など、カラクリを使うものではない。また、
「一億総活躍」で(匿名ブログの炎上で)保育と介護の一体化の普及を促すなど。「一番の目的 憲法改正」のためなら、手段を選ばずのように思えます。携帯料金の値下げも、もう聞き飽きました。安倍首相は、②だけ、「禁じ手を使い、日本の財政赤字を解消しています」と成果として声明を出すほうが、自然ではないでしょうか。
注1)元小泉首相はあれだけ景気が良かったにも関わらず、社会保障充実のため、国債約250兆円、大量発行しています。
注2)非伝統的金融政策は、政府が介入しすぎ、と言う点では、批判すべきではないか、と私は考えています。
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補足があるので、書きます。
この記事は、参考文献を挙げていません。消費税導入が実は純増税では
なかったのは、大切な友人である井手さんから随分前に教わり、身に染みて
いることです。
私は自民党でも民主党でも、立憲主義、または民主主義を守ってくれるなら、
どの党で票を入れます。(共産党でもいいのですが、共産党は思想(マルクス)
が強く、本気で消費税を撤廃します。法人税を上げてしまう(日本の法人税は高すぎ
ます、これ以上上げると倒産する企業が増えます)。
あれですよ、企業に賃上げなんて要請せず、「人件費も問題もありましょうから、無理して賃上げはせずとも、政府が平等公正に再配分しますから、その分法人税と相続税、高額所得者の所得税増税しときますね」と、涼しい顔で言えばよかったのです。
消費税増税と言われたら反射的に『反対』の声を上げてしまう人は、典型的なポピュリズムに走ってしまうタイプです。そういう解りやすい連中の票を稼いでおいて、本命の憲法改正に望む魂胆でしょう。
アベノミクス成功、増税先送り、と国民のご機嫌をとる文句を、選挙前に並べたいのです。そうしないと、あのチンケな改正草案は通るわけがありません。
1989年の消費税導入は、言い変えれば、税の直間比率見直し、と言えるのではないかと思います。僕には直間比率と言ってもらったほうがピンときます。純増税と区別しやすいからです。
>法人税と相続税、高額所得者の所得税増税しときますね
相続税と累進課税は良いとしても、法人税を増税するのは頂けません。なにやら会社は金持ちで、個人は貧しいといった根拠の無いイメージのせいでしょうか。
日本の大多数の会社は中小企業で、法人税の支払いにアップアップしています。少数の大企業は、法人税を上げたら日本を出て行って、外国に法人本支店を置くかもしれません。そうなると日本は空洞化して困ったことになります。
いずれの世でも国民が政権に期待するものの第一位は、経済政策です。安倍さんは憲法改正の夢が実現するまでは、バズーカを撃ちまくり、アベノミクスは成功していると言い続けなければならないでしょう。
法人課税で中小企業の負担になっているのは「外形標準(資本金と従業員数)」を採用している地方税でありましょう。
法人所得税は、利益に対してかかりますので、赤字の事業年度はかかりませんし、その赤字を次の事業年度やその前の黒字の事業年度から差し引いて税負担を軽くできます。
税金を担う力「担税力」はやはり、能力=多く稼いでいるところに求めるのが公平だと思います。
相続資産課税は、昨年話題になったトマ・ピケティも、相続によってもたらされる莫大な資産が、1%の超富裕層の存続を支えていると「21世紀の資本(邦題)」で述べているそうです。
法人税を上げると、日本の才行空洞化が起きるかどうかは、今や世界の高品質ブランドとなった「メイドインジャパン」を手放す選択をしなければなりません。
ケイマン諸島などの「タックスヘイブン」問題は、国際的な話し合いの枠組みで解決が望まれるでしょう。
法人税を下げるというのは、バブルとともにあっという間に消えた「メセナ」精神が示す通り、寄付や社会貢献精神が低い日本の大企業にとっては、内部留保のみが増えて、再分配なり社会還元はされないだけだと思います。
>法人所得税は、利益に対してかかりますので、赤字の事業年度はかかりませんし
優遇すべきは規模が小さいながらも利益を伸ばしているベンチャー企業や、今まさにぐんぐん伸びている中小法人です。赤字決算やその年度累積などに頼っている法人は問題外です。私は両方のタイプの起業家が友人にいるのでよく分ります。
優秀で将来性のある中小法人は、節税対策もそこそこにしっかり税金を払い、配当金を資本に積み増しして力をつけていきます。そういう将来有望な企業に重い法人税をかけてはいけません。
内部留保や再分配がないのは、一部の大企業などの法人にすぎず、これらを十把一絡げにするのは、ちょっと誤解を招くと思います。
優良ベンチャー企業への減税は「特別措置法」で手当てしましょう。しかし、今のベンチャーもいつかはソニーやホンダのような大企業になるでしょう。
そこで巨額の利益を上げたら、担税力に見合う税率を課するのは理に適っているはずです。
法人所得税の大きな部分は、巨大企業のものでしょう?
トヨタの「純利益(税引き後)」でも、名古屋市の年間予算ですよ。その金でたぶんアフリカの国をいくつか買える金額です。
たくさん儲かって(持って)いる人(会社)が累進的に多くの税金を担うべきだという原則が持つ説得力は強いものがあります。
担税力を考慮しなくてよいほど低率で、つまり広く薄くかけることとセットです。
税の形式上の「公平感」はこの2つの原則以外にはないと思っています。
>しかし、今のベンチャーもいつかはソニーやホンダのような大企業になるでしょう。
なるといいですね。そのためにも、発展途上で高すぎる法人税に邪魔されることのないようにするのが、資本主義においては大切です。
>たくさん儲かって(持って)いる人(会社)が累進的に多くの税金を担うべきだという原則が持つ説得力は強いものがあります。
僕の考えは、最初のコメントに書いた通りです。
つまり「相続税と累進課税は良い」です。
資本主義を理解するためには、自分をサラリーマンではなく、中小企業の社長さんになったつもりで考えると、実感がわきやすいかも知れません。
まず、アベノミクスの「インフレ2%目標」ですが、「デフレ」は多くの方にファスト
ファッションや、安い外食産業、など、多くの方には抵抗がありません。
「インフレ」と聞くと、良いイメージはないかもしれません。しかし、なぜデフレが
経済学に駄目かというと、デフレにより負債の実質負担率が高いと、企業や倒産、
破綻します。また、実質金利を上げ、設備投資等、投資の足を引っ張ります。
「インフレ2%目標」というのは、貯蓄が無価値になるようなハイパーインフレでは
ありません。
また、純増税と書いた理由は、1989年の消費税の導入は、また1998年の
消費税率引き上げ、は法人税率の引き下げの穴埋めだからです。
>税の直間比率見直し、と言えるのではないかと思います。
そちらのほうが納得しやすいと、私も思います。今、安倍政権の財源は、
禁じ手の日銀の国債買いオペレーション1年で80兆円で、まかなわれて
います。だからオリンピックに『負けるデザイン』で巨額をかけ、防衛費も
年々上がっているのではないでしょうか。
空前の大赤字にも関わらず、予算は無限大という矛盾。何でもできます。
(完全に嫌味です。)
日本の法人税率は世界第2、3位をウロフロしています。大企業は、輸入
産業が多いので、禁じ手の日銀国債買いオペで、円を大量供給すると、
円安にし、ドル建てで、利益がでる大企業にとっては得です。
しかし、国内産の中小企業には負担が多きすぎます。
できるだけ、中立的立場を尊重したいので、なぜデフレが経済学的に
良くないか、私が書けた理由を以下、記述します。
私が大学、または大学院で専攻したのは「ケインズ的政策」です。
そのきっかけとなったのは、吉川洋先生(内閣府経済社会総合研究所
景気動向指数研究会座長)の論文です。
それで、アベノミクス、非伝統的金融政策に対して、肯定的な面がどうしても
出ます。(ただ「GDP目標600兆円」は悪質です。あと、政府が介入し過ぎです。)
また「定義から遡れ」というのは、吉川先生の師匠の宇沢弘文先生の言葉です。
学部時代に、卒業論文を見てもらう機会があり、指導教官からはOKが出ていた
のですが、「0点」で、その後半年間かかって書き直しになりました。
「投資の定義って何? 簡単に投資と言う言葉を使ってはいけない」。
>無理して賃上げはせずとも,
2回目以上、経団連と相談し、最低賃金上げるとイラっとしますね。
政府の介入が大きすぎます。桝本さんのコメントは、背景に法律があるのが
よく分かります。
>いずれの世でも国民が政権に期待するものの第一位は、経済政策です。
安倍政権の報道規制もひどいし、自律性ない官邸人事も、報道機関&霞ヶ関の
官僚は迷惑だと思います。
集団的自衛権を強行採決した際に、支持率が一桁に下がるかと思っていましたが、
ここまで経済政策が国民にとって期待されるものだと、私は予想外でした。
本日の共同通信のニュースです。
首相官邸で開かれた月例経済報告等に関する関係閣僚会議に臨む
安倍首相、3月の月例経済報告、政府が景気判断引き下げ。消費低迷、
企業に弱さ反映。消費増税判断に影響も。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ベルギーの同時テロで、今後日経平均株価が下がるだろうと、思って
いたところです。
そうすると「国民の皆様には負担をかけたくない、支持率稼ぎがお上手な
安倍首相は、消費税増税を見送るのではないか」と思っていた、矢先の
ニュースです。これはもう4月の消費税増税延期は間違いない、と思います。
(内閣府の公開資料では元々去年の6月に決まっていましたが…)
安倍首相といい、菅官房長官といい、明治時代が古きよき日本の
憲法改正まっしぐらで大丈夫なのでしょうか? 首相が駄目でも、
官房長官は賢明なものです。しかし菅官房長官はただのクレーマーに
見えます。
昨日の国会答弁で安倍首相は「リーマンショックや東日本大震災クラスの想定外の事態が起こらない限り、消費税増税は予定通り行う」とハッキリ断言しました。これは何を意味しているのでしょうか?
1)近いうちに、そのクラスの大規模な事態が、発生する。(shale gas債権の破綻など)
2)首相の答弁はその場しのぎで、参院選が近づけばコロッと変わる。
3)首相の答弁は正直なもので、予定通り消費税は増税される。
>2)首相の答弁はその場しのぎで、参院選が近づけばコロッと変わる。
私も昨日、NHKニュース7時で国会中継の様子を見ました。
2)だと考えています。「一見、増税します、と悪い期待をさせて
おいて延期しました」と、したら支持率は上がるのではないでしょうか。
今回のベルギーのテロで、日経平均株価が下がると予想されます。
そうすると「やはり国民の皆様の負担を考えると延期になりました」
となると思います。しかし、公明党案の軽減税率はいつから導入するのか、
問題も絡んできます。
3)だとしたら、支持率はどれぐらいになるか、知りたいです。
補足します。私が知る限りでは、安倍首相は、本音は安心して消費税率10%
上げたいのです。しかし、増税した歴代首相は支持率が20%まで落ち、倒閣
になります。公明党案の軽減税率案も考慮すると、今は「増税します」と
言わなければなりません。最後は安倍首相が決めることです。
(集団的自衛権に反対だった公明党は、衆院参院7日間でかなり粘りました。
親和性の高い、自民党と民主党(のいわゆる右寄り派)だとしたら、
もっと通りやすい法案になっていた、というのが私の知る限りです。)
日本人が小さな政府、「財政規模も公務員の数も」少ないのに、租税抵抗は
としては、大きな理由があります。財政で、教育に使われる額が非常に割合と
して少ないのです。
「公財政教育支出の対GDP比は、機関補助と個人補助を合わせて3.8%であり、
データの存在するOECD加盟国の中で最下位である」。それで見合うだけの
受益感がないのです。
スーパーグローバルなど(文系重視の大学弱体化、さらに哲学科や数学科など
学問の要となる学科を弱体化の目的。)、いい加減な審査)をしている場合では
ないのです。(一橋は徹底的に会議を開き、抵抗しました。)
安倍首相が仮に増税に踏み切ったとしても(延期すると思いますが)、もう消費税は
10%以上上げるのは無理だと、私が知る限りです。相続税など他の税金に回ります。