早苗ちゃん、テレビの電波ってそう簡単に止められないんだよ

takaichisanae3

高市早苗ちゃん、総務大臣なんて慣れない仕事したもんだから、舞い上っちゃたんだよね。そして自分に何かすごい権力を与えられたと、勘違いしちゃったんだよね。わかるよ、上司の安倍くんも自分が一番偉いって態度だもんね。

でもね。みんなの前でしゃべる時には、法律をよく読んで、その意図をお勉強してからの方がいいよ。今回だって放送法第4条にこう書いてあったから、つい自分が電波停止できるんだと思ったんでしょう。

放送法第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
この放送法第4条に書かれている「政治的に公平」ではないと自分が感じた時、(つまり自分の属している自民党の意見が、公平じゃなく扱われていると感じた時)、電波法第76条によって電波停止できると思っちゃったんだ。
電波法第76条 総務大臣は、免許人等がこの法律、放送法 若しくはこれらの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したときは、三箇月以内の期間を定めて無線局の運用の停止を命じ、又は期間を定めて運用許容時間、周波数若しくは空中線電力を制限することができる。
それを脅しに使えば、テレビ局は怖がって自分たちに有利な放送をしてくれると期待してしまった。ところが法律の解釈というのはそんなに簡単なものじゃないんだ。例えば同じ放送法でも第4条は二番手の、

第2章 放送番組の編集等に関する通則

のうちの一つで、いわば倫理規定。簡単に言うと努力目標みたいなもんなんだな。それより前にこの法律がそもそも何のためにあるのか、その意義を書いた部分があって、そっちの方が強い。

第1章 総則

(目的)
第1条 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。
ここにはっきり「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」と書かれている。この第1章総則、(目的)にまず真っ先に、自律と表現の自由がこの法律の意義であると書かれている。これじゃあ第4条なんて吹っ飛んでしまうわけなのよ。さらに上位法というのがあって、それが憲法。これと矛盾する条文は意味を持たないわけです。
憲法第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
放送は「出版その他一切の表現の自由」に当たりますから、放送内容は基本的に自由であり、この憲法に基づいて作られたのが、放送法なのでありまーす。放送法の第4条なんて小さい小さい。とはいえ政治的に公平であることや、意見が対立している問題をできるだけ多くの角度から扱うことは、もちろんとても大切なこと。自律を保障されたテレビ局やジャーナリストは、保障された自律にのっとって厳しく自らを律していかなければならない。まずは自浄作用、次にBPOによる審査でしょうか。少なくとも早苗ちゃんの出番じゃあなかった、というわけです。恥ずかしくて、こんな文体になっちゃた。
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4 comments to “早苗ちゃん、テレビの電波ってそう簡単に止められないんだよ”
  1. さらに、
    第二十一条 第二項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
    だから停波命令は、放送事業者が、憲法に違反して無効である旨をもって命令取り消しの仮処分を申請すればまず確実に通る。
    もちろん「命令があっても拒否する」と言えば、放送設備を警察権力を持って差し押さえすることも、妨害電波(ジャミング)をすることもできない(自衛隊を使えばできるけれど、海外にはクーデターと伝わって経済制裁で日本は終わる)。

    また、放送法の「罰則」の章を読むと、百七十四条にある総務大臣の停波命令に違反したものの罰則が百八十四条にあって「6月以下の懲役または50万円の罰金」。放送事業者が「へえ、わかりました」と言って社長を突き出せばよいだけである。
    まったくたいした罪ではない。
    刑法百五十七条の「公正証書原本不実記載(登記簿や戸籍などにウソを記載した罪)」が5年以下の懲役または50万円以下の罰金となっているのに比べれば、その「たいしたことなさ」がわかる。

  2. もう、自民党の草案のような状態になっている、と考えています。
    立憲主義は壊れています。

    「安保体制の何が問題か」長谷部恭男、杉田敦(編)、岩波書店
     の「対談 暴走する政治にどう対峙していくか」青井未帆、伊藤真
     P,238より

    「自民党の改憲草案、国防軍の規定の中に、機密保護を入れてい
     ますが、それは特定機密保護法安でやってしまいました。(中略)
    国民の国防義務については、いま教育の現場に様々な事実上の
    統制が働いて変わりつつある。そして、軍法会議、軍事裁判所の
    たぐいも、聞くところによると、東京高裁の中に防衛部というものを
    設置したらどうだという研究が進んでいるとも聞きます」。

    ただ、「安倍政権は軍国主義ではないが、憲法改正、日ロ国交正常化、
    北朝鮮拉致被害者奪還の意欲は持っている」。

    • >もう、自民党の草案のような状態になっている、と考えています。
      >立憲主義は壊れています。

      安保法制にしてもそうですが、先に違憲状態で実行してしまってから、後付けで憲法を改正しようという、立憲主義を全く無視したやり方ですね。
      自衛隊でそういう状態になっているから、他の法案もそれにならってしまえ、という暴走状態です。

      安倍首相がそんなだから、高市早苗総務相も、憲法なんてどうせ後から変えればいい、と軽視する言動に出たのかもしれません。

  3. 誰か野党議員が質問してくれないかなと思うこと。
    「もし、どこかのテレビ局が、政府・与党の政策と主張を無批判・無反論でずっと流し続けたら、政治的不偏不党から逸脱する旨をもって停波命令の対象としますか?」

    大臣は、きっと薄笑いを浮かべながら「政府の方針に沿うことが偏っているとなぜ言えるのでしょうか?」とフグがエサをつつくときのような口と目をして質問返ししそうです。

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