フォルクスワーゲン・ショックは絶望的なレベルだ
ドイツ車とライバル関係にあった、日本の自動車メーカーにとっては、営業面ではある意味朗報かもしれませんが、グローバル経済の観点からは、今回のフォルクスワーゲンの問題は計り知れないくらい大きいものがあります。単なるトラブルやミスによるリコールではなく、意図的に組織ぐるみで世を欺いた、悪質な詐欺だからです。計測の時だけ正常な数値を出し、実際の走行では基準の40倍にも上るNOxを排出しながら走っていたのです。
フォルクスワーゲンというクルマは、ヒトラーの時代から構想されてきた、ポルシェ、メルセデスとは別の「国民車」というコンセプトで愛され続けてきました。僕はガソリン車時代のフォルクスワーゲンしか乗ったことはありませんが、率直な感想として「ドイツという国は大衆車レベルでも、こんなにもクオリティの高いマシンを作る国なんだ」と、当時の日本車と比較して聞きしに勝るドイツの職人気質、質実剛健さに惹かれていったものです。
つまり第一にドイツが長年にわたって培ってきた、Made in Germanのブランド力に、拭い去れない汚点を今回の事件で残してしまったことが挙げられます。極論すれば僕の抱いていたような夢をぶち壊してしまった。つまりドイツ自体が伝統と格式を失いかねないということです。とうぜん為替は素早く反応し、ドイツの他の業界にも悪影響は明らかでした。ドイツの製造業に悪い影響があると、EUROそのものにも直接的に反映します。
続いて第二に、「ディーゼルエンジンは、本当に環境保全に有効なのか」という、これまた根本的な問題を、一から考えなおさなければならなくなりました。日本はガソリンエンジンと燃料電池によるハイブリッドカーに活路を開いてきました。一方ドイツにその技術力を牽引されているEURO圏では、これまで環境保全にディーゼルを応用することで対応できるとしてきました。今回このフォルクスワーゲンのインチキなディーゼル車によって、各国のディーゼルエンジン技術について、再検討の必要性が出てきました。
このように今回の問題は、フォルクスワーゲン社の一社の問題にとどまらず、EURO圏全体の問題、世界経済の問題として深い傷跡を遺したのです。ドイツは日本と同様に技術立国だったはず。質実剛健な職人の技術力によって、ヨーロッパをリードしてきたはず。フォルクスとは国民、ワーゲンとは自動車、つまり文字どおり「国民車」であり、ドイツの技術力の象徴でもありました。
1100万台も世界に流通しているこのクルマが、どうして恥辱に塗れる事態になったのか。損害賠償もこれからたいへんなことになるでしょうが、質実剛健で職人気質のドイツ人というイメージを失った代償は、あまりにも大きいでしょう。さらなる調査を待って、今後どのように信用回復に努めるのか、日本も他人事ではなく見つめて行かなくてはなりません。
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リーマンショックのもとになったサブプライムローンを思い出しました。
返済能力の裏付けがない債権を、安全で高利回りと言って売りまくっていたのと同じです。
フォルクスワーゲン社の危機は、中東北アフリカからの大量の難民問題とかさなり、ヨーロッパにかつてのペスト並みの荒廃をもたらすかもしれません。
まるで狙ったような最悪のタイミングだといえましょう。
さらに中世より悪いところは、ペストと異なり、封じ込めがきかず世界中に感染が広まることです。
これまで難民問題等に優等生的な態度を取ってきた、メルケル首相にしてみれば、もうお手上げと投げ出したくなるような、気分になっているかもしれません。