マッコリに酔っていた?韓国ユン大統領「戒厳令」

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ユン大統領が酒に酔っていた、というのは100パーセントまったくの僕の想像であって、そのような事実もなく、説を唱える人もまったくいません。酔っていたのは僕の方です。僕は今月3日の晩にしこたま酒に酔って帰宅して、寝る前のニュースをチェックしたところ韓国の戒厳令が飛び込んできました。戒厳令とは物騒な、と思いましたが、とりあえず北朝鮮とは直接の関係がないようなので安心し、22時30分ごろそのまま床につきました。翌日4日朝起きてみると、戒厳令は解除されていました。この6時間の短い時間に戒厳令は発令していたのです。

ソウルと東京は時差がないので、普通なら寝ている時間です。でもって韓国の政治家も軍隊もよく働くなあ、と感心していました。とは言え「戒厳令」とはただ事ではありません。日本のように民主化された法治国家には必要ありません。国会をはじめあらゆる政治活動を停止し、市民には言論の自由や行動の自由を制限し、すべてのメディアは軍の統治下に置かれます。民主的な法治国家にとって、憲法の精神とは正反対の例外規定です。かつてのナチスドイツや、戦前戦中の日本に見られたマーシャル・ローですが、現代の民主主義ではクーデターでもない限り必要ありません。

なぜユン大統領が酒に酔っていた説を思いついたかというと、そんな馬鹿げた「戒厳令」を出すなんて素面ではできないだろう、と感じたからです。人間酒に酔うと気が大きくなります。かつて我が家でも(妻も飲むので)夜中にアマゾンでポチってしまい、翌朝後悔するという失敗を繰り返していました。それで「酒気帯びアマゾン禁止令」なるものを作り、対処してきました。今回の韓国のユン大統領が「戒厳令」を出した時間帯からして、何となくそれに近いものを感じてしまいました。

酒に酔って公務をすること自体が言語道断ですが、ユン大統領にもそれくらいしなければならないほどの、強大なストレスが溜まっていた可能性もあります。日本でも今ちょうど来年度予算案を審議していて、自民公明合わせても過半数に達しないという、少数与党の状態であります。予算案を可決するには野党の同意を得なければならない、という(むしろそれが当たり前だと思いますが)厳しい制約の中、石破首相は丁寧に野党と合意点を探っています。安倍政権の時のように議案を提出すればそのまま通る、という多数与党とは違う国会で、さぞやお疲れだと思います。

しかしユン大統領が今回の「戒厳令」を出した理由が「少数与党のため国会が思うように進まないから」というビックリするほど幼稚な動機でした。はあ?という感じです。そのための国会ではないのか。司法試験を9回目で通り、検事総長まで登り詰めたいうユン大統領が、民主主義の基本である三権分立さえ理解していなかったのか。日本でもし石破茂首相が、少数与党のため予算案が通らないと苛立ち、自衛隊を国会に向かわせたらどう思います?

今回は命令を受けた兵士の方も、戸惑いを感じたようで「自国民には銃口を向けない」という世界共通の常識と矛盾します。兵士の中には銃を持って来たものの、弾倉には訓練用の青いものを使う人もいました。自国民に発砲しない、というささやかな抵抗だったようです。警察や検察も戸惑いながらもユン大統領を内乱罪で逮捕する方針を固めました(12月12日現在)。

今回のことを理解するには、韓国という国を歴史から理解する必要があります。KーPoPやサムソンなどの人気で知られるお隣の国、韓国ですが、日本とは大きく違う歴史を歩んできました。まず朝鮮戦争は終結しておらず、今も北朝鮮とは停戦している状態に過ぎない、戦争当事国’であるということです。そのため全国民に徴兵制があります。KーPoPのアイドルでも男子ならば2年間ほど姿をくらます話はよく聞きました。韓国映画を見ていると、戦闘シーンなどで俳優の銃の扱いが、素晴らしく上手で日本の役者とは大違いだと感じます。実銃を使い慣れているのです。

ではなぜ「朝鮮戦争」が始まったのか。南北に分かれてしまったのか。それを考えると、我々日本人が言うのも口はばったいのですが、とにかく気の毒な国としか言いようがないのです。朝鮮半島はもともと清国に支配されていた李氏朝鮮や朝鮮帝国でした。それが明治時代、日清戦争で日本が攻め込んだことで、日本と韓国が併合されました。日韓併合というと聞こえがいいのですが、要は日本の支配下に置かれたわけです。その後は1945年の第二次世界大戦で、日本がアメリカに大敗し、無条件降伏するまで日本の領地でした。

その後、日本列島は米軍のマッカーサー率いるGHQの支配下に置かれ、今の平和憲法を作り、1952年にサンフランシスコ講和条約で日本は独立を果たします。僕が生まれる8年前です。日本列島は全土をアメリカ軍だけが支配したという意味で、非常にラッキーでした。なぜなら連合国側には終戦直前になって参戦した、ソ連(今のロシア)が含まれており、それらが北から攻めてきていたからです。ソ連侵攻の傷跡が北方領土に残るものの、北は北海道から南は九州沖縄まで全土をアメリカ1国に支配されたのは奇跡です。

マッカーサーの頭の中には日本列島の統治しかなかったので、朝鮮半島までは考えが及んでいませんでした。いわば朝鮮半島はエアポケットのようにすっぽり抜け落ちていたのです。そんな中で朝鮮半島では朝鮮民族が独立を目指していましたが、北から攻めてくるソ連の勢いにはかないません。これでは朝鮮半島が共産主義の国になる。と危惧したマッカーサーは、ようやく朝鮮半島を南から攻めはじめます。日本の敗戦から5年後です。その時差が、気の毒な国を生むことになります。一歩間違えれば、北海道がロシアに、九州が中国に、本州がアメリカに、と分断されていてもおかしくない状況だったのです。

こうして南北朝鮮は分断され、北にはソ連の傀儡政権である金日成が統治する朝鮮民主主義人民共和国が誕生し、南にはアメリカの傀儡である大韓民国が誕生し、米ソ冷戦の名残として、今もなお朝鮮’戦争は終結しないで停戦のままです。北朝鮮の話は置いておくとして、韓国はスタートから軍事政権でした。民主化されたのが1987年ですから、意外にもずいぶん最近の話です。その意味でも気の毒な国です。

2013に女性大統領となった第18代の朴槿恵(パク・クネ)のことは覚えていらっしゃいますか? 彼女の父親である朴正煕(パク・チョンヒ)は1960年代から1970年代にかけて韓国を引っ張った大統領ですが、朴正煕は満州陸軍士官学校の出身で、日本名を高木正雄と名乗り、大日本帝国陸軍として陸軍少尉まで満州で日本のために戦っていた軍人です。もちろん日本語をしゃべり韓国の経済発展にも寄与しましたが、1979年にKCIAに暗殺されます。日本がオリンピックだ、万博だと戦後の高度経済成長の果実を味わっていた頃、朝鮮半島では血生臭い朝鮮戦争があり、日本の高度成長期は「朝鮮特需」とも言われます。

朝鮮戦争に疲れたマッカーサーは、一切の武力を拒否する第9条入りの憲法を作らせた後で、その舌の根も乾かないうちに「自分たちは朝鮮戦争で忙しいのだから日本も自分の国は自分で守りなさい」と言い出します。それが警察予備隊(今の自衛隊)の発端です。日本は戦後まもなく始まった朝鮮戦争で必要な物資を大量に供給することで、奇跡的な高度経済成長を遂げました。この漁夫の利とも言える「朝鮮特需」のことも「日韓併合」と並んで歴史に残すべきでしょう。

さて朴正煕に限らず、今問題のユン・ソンニョル第20代大統領に至るまで、韓国の大統領すべてが無事に畳の上で(オンドルの上で?)死ねた試しがありません。20人すべてが暗殺または逮捕されて獄死。という最期を遂げています。(朴槿恵は恩赦で出てきたのかな?)いずれも次期政権によって消されているのです。どこの国のリーダーでも暗殺というリスクはあります。日本なら伊藤博文から安倍晋三まで。アメリカではJFケネディーが有名でしょう。でもすべての大統領が悲惨な最期を迎えるという国はちょっと無いのではないでしょうか。それでも大統領になりたいかと言われれば僕はイヤです。

韓国の憲法では、大統領におそろしく強大な権限が与えられている反面、大統領の任期は5年で1期です。アメリカの大統領制が4年で2期で、日本の自民党総裁の任期は3年で3期(安倍晋三以前は3年で2期)です。アメリカや日本と違って大統領が1期という制度が問題だと僕は思います。おそろしく強い権限を持ち、おそろしく短い大統領の任期。現大統領には次は無いと分かっているから、警察をはじめとする官僚や検察、そして軍部までが大統領の任期の後半には命令に従わなくなります。いわゆるレームダックという状態です。そして多数野党は、大統領のどんな些細な汚職でも見つけて逮捕します。これが2期あれば、再選されるかも知れない、という可能性から逮捕されないでしょう。これもまた気の毒な国としか言いようがありません。

ただ韓国の場合、民衆が立ち上がるパワーを感じます。今回も国会に市民が押し寄せ、人の壁を作るなどして抵抗している様子が映し出されました。そしてネットですぐに共有されます。そのパワーや熱さに、僕は一縷の望みを感じます。日本の市民にそれができるでしょうか。60年安保、70年安保の頃はデモ行進をしたり、国会前に押し寄せたり、といった抗議の意思表示をしていたようです。それ以来パッタリと抗議デモを見かけなくなり、羊のように従順に見えます。政治が上手くいっているのか、国民性なのか分かりませんが、選挙にさえ行かなくなったのは逆に不安を感じます。

最後に前回の総選挙で地味ながら面白いデータを紹介しておきましょう。衆議院議員選挙と同時に、最高裁判所判事の認否を決める投票もありましたよね。あれって辞めさせたい判事にはバツ印を付け、辞めさせたくない判事には何も記入しないルールになっています。最高裁判所の判事の名前なんか一人も知らないから、何も記入しないで投票している方が多いのではないでしょうか。前回の選挙でバツ印を付けた割合が初めて全体の一割を超えたそうです。最高裁の案件なんて分からないが、誰か分かる人に一任しよう。あるいは司法当局にも危機感を持ってもらおう、という意思表示です。

僕はいつも全員にバツ印を付けています。そもそも白票なら信任という制度がおかしい。信任なら丸印をつけ不信任なら白票という制度にすべきです。今回は冤罪の袴田さんの無罪確定がニュースで流れたので、バツ印を付ける人が多かったのではないでしょうか。冤罪で死刑にされてはたまったものではないので、それぞれの判事の判例など、もっと分かりやすい制度にしてもらいたいです。

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