トランプのエルサレム首都認定で、世界平和が致命的な危機に

これだけは絶対に行ってはならない。トランプ大統領が選挙中に掲げた公約の中でも、メキシコとの壁政策やムスリムの入国制限政策など愚策とは比べものにならない、世界的に致命傷を与える暴挙。絶対にやってはいけないと僕が思っていたのが、イスラエルの首都をエルサレムと認めることでした。それをついにトランプ大統領は実行し、イスラエルの米国大使館をエルサレムに移転すると発表したのです。

このニュースは世界中を駆け巡り、もちろんパレスチナ人だけではなく、すべてのイスラム教徒、イスラム国家が一斉に反発しました。親米であるヨルダン国王のアブドゥラ2世や、サウジアラビアのサルマン国王も中東和平を崩壊させると非難し、トルコはイスラエルとの国交断絶も辞さない構えです。

ドイツのシグマール・ガブリエル外相は、「大使館の移転でさらなる衝突を生み出し、極めて危機的な状況が加速するだろう」。イギリスのテリーザ・メイ首相は「大使館移転問題について直接トランプ氏と協議する」。フランスのエマニュエル・マクロン大統領はトランプ氏との電話会談で、「エルサレムの位置付けは和平交渉を通じて解決するべきだ」。それぞれトランプ大統領の暴挙を食い止めようと、先進主要国は即座に動いています。ロシアのウラディミール・プーチン大統領も5日、アッバス議長との電話協議で「中東情勢の状況を複雑化させる」と懸念を示しました。

ローマ法王フランシスコが6日、バチカンで演説し、「エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地がある随一の街だ。私はこの数日間の状況に強い懸念をもっている。エルサレムの現状を尊重すべきと、あらゆる人たちに呼びかけたい」と述べたとおり、エルサレムは世界中の宗教の聖地です。

イスラム教徒であるパレスチナ人と、ユダヤ教徒の国イスラエルの間で、エルサレムの領有権をめぐって争われたこともありましたが、今ではイスラエルが首都機能をテルアビブに移し、エルサレムはどちらにも属さない特別な聖域として国際社会が認めて平和を維持しているのです。ユダヤ教の「嘆きの壁」、キリスト教の「聖墳墓教会」、イスラム教の「岩のドーム」が並立していて、世界中の人が訪れることができます。ここをイスラエルのものとしてしまうと、ユダヤ教のみを認めることになり、平和のバランスが崩れます。

トランプ大統領が米大使館をテルアビブから移転するプロセスを開始すると発表したことを巡り、国連安全保障理事会は8日に緊急会合を開催しました。会合では各国から批判が相次ぎ、スウェーデンのオロフ・スクーグ国連大使は、米国の決定は中東での「交渉の行方に予断を与える恐れ」があるほか、「国際法と矛盾する」と指摘。英国のマシュー・ライクロフト国連大使は、米国によるこうした動きは和平に寄与しないとし、英国は東エルサレムを「占拠されたパレスチナ領域の一部」とみなしていると述べました。

日本人にはユダヤ教徒もイスラム教徒も少ないためか、この世界的な大騒動に関心を持つ人は少ないように見受けられます。しかし20世紀から続く中東の紛争の種になっているのが、そもそもがこのエルサレムの帰属問題であることを思うと、そして日本が石油の輸入を中東に依存していることを思うと、中東の和平が乱されることは人ごとではありません。

ドイツ、イギリス、フランス、ロシアなど世界の首脳が声明を発表する中、さすがに日本もトランプ大統領に追従することはあるまい、と思っていましたが、安倍首相からは声明はまだ出ていません。でも河野外相はインタビューに答え、記者団に「日本の大使館を移転するつもりはない」と強調し、トランプ大統領の声明によって中東全体の情勢が悪化することを懸念していると述べています。

アメリカのトランプ大統領だけが世界の中で孤立する形になってしまいましたが、アメリカ国民にとって、あるいはトランプ自身にとってメリットはあるのでしょうか。公約の実現という以外に、何もないように思えます。娘婿のクシュナー氏に気を遣ったのでしょうか。ユダヤ教徒である彼もイヴァンカ氏も、それほど喜んではいないようです。

結果的にトランプ大統領の国際感覚の欠如を、世界に知らしめるだけであったと思います。速やかに撤回して、この話はなかったことにするのが、トランプ政権にとっては最善の選択だと言えそうです。安倍さんはドナルド・トランプと本当に仲が良いのなら、メイ首相やマクロン大統領のように直接電話して、「もしもし、シンゾーだけど、」とご注進すべきではないでしょうか。

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One comment on “トランプのエルサレム首都認定で、世界平和が致命的な危機に
  1. ガザ地区の主力組織である「ハマス」はシーア派で武闘派。もちろん武器を取って立ち上がれと声明を発しています。ヒズボラは武力としてはイスラエルの敵ではありませんが、それゆえに、同じシーア派の盟主イランが支援することは確実でしょう。
    イランがパレスチナに介入することは、イスラエルにとって非常に危険なはず。そこで考えられるのがイスラエルによるイランへの先制攻撃です。
    もちろんイランの反撃を考慮して、イスラエルの攻撃は苛烈かつ相当徹底したものになりましょう。
    もしイランが核兵器を自前で開発していたら使うことになっていたかも知れませんし、使わせないためにイスラエルが確実に保有しているであろう核兵器を先に使うことだってあり得ました。
    しかし、イランの隣国パキスタンは核兵器を保有しておりかつイスラム国家です。イランを追い詰めると、こっそりパキスタンから購入してかつ使用する恐れが出て来ます。
    そんな感じで、戦争が拡大すると、本当に第3次世界大戦の様相を呈してきます。
    軍事経済ともに圧倒的なアメリカ・中国・ロシアが囲む「吹けば飛ぶような」北朝鮮問題とは桁違いの世界的危機です。

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