「希望の党」は安倍政権を援護射撃するための新党だった

このままでは自民党は圧勝し、安倍政権は「希望の党」の援護射撃を受けてパワーアップするという絵が見えたので、それでいいのかと不安になりました。

「希望の党」代表の小池百合子氏については、自民党の安倍首相、菅官房長官、石破茂氏など口をそろえて小池代表の出馬を勧誘もしくは挑発するようなコメントを発表しています。民進党から希望の党へ合流の旗を振った前原民進党代表からも4日、小池代表に出馬するように熱い「ラブコール(小池氏談)」が送られたが、小池代表は都知事の職があることを理由に、断固として出馬する予定はないとコメントしています。

小池新党が自民党と全く同じ政治理念である件について、踏み絵による選別と排除が行われている理由について、そして枝野幸男氏による新党「立憲民主党」が意外な人気を集めていることについては、前回のブログ「小池百合子の野望と誤算」に詳しく書いたとおりなので、ぜひお読みになって下さい。なぜ自民党がライバルであるはずの小池新党を歓迎しているのか、なぜ小池氏が民進党と合流すると見せかけて、一転して排除の方針を打ちだしたのか、その理由がわかると思います。

このような野党のいわばエンタメ政治によって、マスコミが振り回されている間にも、自由民主党は着々と地道に実績と政策をアピールし、確実に票を固めつつあります。野党を一口に、日替わり弁当ならぬ日替わり政党と揶揄する自民党候補者たちからは、伝統と結果、固い地盤を持つ自民党ならではの自信と余裕がうかがえます。このまま行けば安倍晋三氏が設定したかなり低い勝敗ラインである233議席なら確保できるでしょう。この極めて低い勝敗ラインを首相が打ちだした時点で、国政選挙に負けても政権を手放さないという、安倍氏のズルさと自分への甘さに敏感な有権者は気づいていると思います。

希望の党は一次公認で192人の候補者を擁立し、最終的に過半数を超える233人以上の候補者を立てるなど本気で二大政党制を狙う姿勢を崩していませんが、その半数は新人で、いわゆる小池チルドレンにすぎません。今後の小池百合子氏の人気如何によって、大きく得票数が変わる不確定要素をはらんだ、寄せ集めの候補者陣だと言えるでしょう。当初は安倍政権に批判的な人からの票を期待していましたが、その実態が安倍政権を援護射撃するものであることが明らかになるにつれ、反安倍票はつかみ損ねると思われます。

一方枝野氏の立憲民主党は、民進党の中でも小池氏の踏み絵を踏まなかった硬派な議員が集まっており、ツイッターのフォロワー数も党の結成からわずか3日間で13万人と、自民党を抜いて一位になる人気ぶりです。政治理念も「トップダウンの政治ではなく、ボトムアップの政治を」と中道政党としての信念と新鮮味があり、また明確に安倍政権を批判しており、反安倍票はこちらに流れると期待されています。しかし候補者数は全国で一次公認は62人と、まだまだ小規模なので、国会で議席を伸ばすには後れを取っている感があります。

そう考えると今回の選挙も、総合的に考えて自民党の圧勝ではないかと僕は予想しています。ただ自民党には一つだけ大きな逆風が吹いています。それは自民党が大敗した6月22日の都議選後に書いたブログ「自民党の総裁選に期待するしかないのか?」に述べたとおり、党総裁である安倍晋三個人に対する国民からの不信感です。森友学園問題、加計学園問題に真摯に答えようとしない姿勢。官僚や司法に対する言論封殺や国会での強行採決。マスコミへの不当な圧力などファシストの様相。といった点で総理大臣としての資質に、各方面から疑問の声が上がっています。

自民党は支持するが、安倍首相のリーダーとしての姿勢に問題がある、という人は多いと思います。

その影響で自民党は前回よりは議席を減らすと見込まれます。でも前議席数が多かったので、仮に40議席失っても目標の233議席は残る計算になるのです。安倍晋三氏はこのような非常に低い勝敗ラインを設定しているため、小池新党「希望の党」や枝野新党「立憲民主党」がよほどの大躍進を見せない限り、自らが辞任することはないでしょう。選挙後はもう安倍首相氏の顔は見たくない、と言う人にとっては残念な予想かも知れませんけれど、自分に甘い安倍氏ならではの戦略です。安倍政権にノーの声は、希望の党と立憲民主党に分散してしまい、自民党を過半数割れに追い込むことはできないような気がします。

万が一、自民党が過半数割れしたらどうなるでしょうか。自民党単独過半数でなくても自公連立で過半数はとれるでしょうから、首班指名は自民党総裁になるでしょう。自民党党内から安倍晋三氏に総裁辞任を求める声が上がらない限り、安倍晋三氏は次期政権でも総理大臣であり続けることになります。厚顔無恥と言われようと無責任と言われようと、安倍氏はなんとしても総理の座にしがみつこうとする気がします。総選挙で自民党の議席数が選挙前よりも減るようなら、それを国民の審判と重く受け止めて石破茂氏などに総裁の座を譲るべきだと僕など思うのですが、安倍氏は平然と無視しそうです。

仮に衆議院において自民党が過半数を割らなくても、自公で3分の2議席を達成できなかったらどうなるか。安倍政権の目指している憲法改正の発議ができなくなってしまいます。その時こそ小池百合子氏の出番です。自民党、希望の党、公明党が連立政権を組むことは、政策が一致していることから大いにあり得る、と僕は希望の党の結成時から予想していました。昨日5日に小池百合子が「水と油のような自民党と社会党が一緒になった、自民、社会、さきがけの連立政権を思い浮かべた」とコメントしていることから、それは確信に近いものへと変わりました。

自社さ連立政権で第三極であった社会党の村山富市氏が首班指名で総理になったように、もし小池百合子氏にも総理の座が用意されているなら、それを条件に希望の党も連立政権に参加する。もし小池代表がギリギリになって出馬するとすれば、それは彼女の新たな野望といえるでしょう。それがかなわなくても「希望の党」は安倍政権を援護射撃する政党になる、というのは疑いようがありません。民進党から希望の党に転籍した議員は、またもや己の信念とのジレンマに陥り、安倍政権の改善を期待して希望の党に投票した国民は、都議選の時と同様にガッカリするはめになります。

彼女が期待しているほどは、希望の党は議席を獲得しないと僕は思いますが、自希公の三党で連立政権を組むには、間違いなく十分な議席数になると予想しています。連立政権のキャスティングボートを握れば、都知事の職を務めたまま、国政をもリモートコントロールできます。彼女は総理の座を諦めたなら、そこに着地するはずです。希望の党は連立政権で憲法改正に乗り出すことになります。同じ自民党でも石破茂氏は憲法改正に安倍氏ほど拙速ではないので、小池氏の方が自民党より憲法改正に積極的かも知れません。

安倍政権をストップさせたいのか、憲法改正をストップさせたいのか。自民党以外に投票する人は、そこまで考えて投票する必要があるということです。

  • 安倍政権もOK、憲法改正もOKという人は「自民党」
  • 安倍政権はノー、憲法改正はOKという人は「希望の党」
  • 安倍政権はノー、憲法改正も今はノーという人は「立憲民主党」

と、やや乱暴ながら、シンプルに分類してきたのですが、状況は変わってしまいました。

  • 安倍政権もOK、憲法改正もOKという人は「自民党」
  • 安倍政権もOK、憲法改正もOKという人は「希望の党」
  • 安倍政権はノー、憲法改正も今はノーという人は「立憲民主党」

となり、これでは自民党と希望の党が何も変わらないではないか、という話です。安倍政権に批判的な人が、希望の党に投票してガッカリする、という構図が見えてきました。

では安倍政権にノー、憲法改正は内容によってはOK、という僕のような人はどうすれば良いのか。とりあえず「立憲民主党」に投票して、安倍独裁を食い止める。憲法改正は自民党が新政権になってから、あらためて考える。という選択肢をとることができるでしょう。自民党は支持するが安倍首相は信頼できない、という人も、まずはこの選択肢をとることで、自民党内の新陳代謝を促すことが期待できます。自民党は勝敗ラインの過半数を割らなくても、大幅に議席を減らすことで、安倍氏を中心とする自民党現執行部に対して、党内の良識派から安倍降ろしの声が上がる可能性につながります。

述べてきたように自民党の票田は盤石で揺るぎがなく、おまけに総選挙でかなり自民党が議席を減らしても、安倍晋三氏は責任を取らない構えです。このままだとかなり高い確率で安倍政権は続投し、様々な疑惑にも禊ぎを与えてしまいます。国民が相当な覚悟で選挙に臨まない限り、この国のリーダーを新しくすることはできないでしょう。本当に安倍政権でいいのか、今一度皆さん自身が考えてみる必要があると僕は思います。

「自民党」「希望の党」はほぼ全国の選挙区に候補者を立てているので、多くの小選挙区で選択肢はあると思いますが、「立憲民主党」は候補がいない選挙区も多いでしょう。「立憲民主党」の選択肢がない小選挙区の人はどうするのか。比例区に民主党と書いて、小選挙区では他の野党候補へ投票することになるでしょう。ややこしそうに見える選挙ですが、とりあえず安倍政権にOKかノーか、憲法改正にOKかノーか、という二点に絞って考えると、以上のようになると思います。

選挙の争点は決してこれだけではなく、税制、福祉、安全保障、そして何より今後の日本の発展計画といった様々な政策を見て比較検討しなければなりません。今回は日本国民にとって最も影響の大きい、安倍首相の信任不信任と、憲法改正の賛否についてのみ拘って分析してみました。各党のマニュフェストが出そろったところで、日本の発展計画についても分析してみたいと思います。

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