マレーシア航空機墜落、テロ説の背景と真相

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香港の人権団体、中国人権民主化運動ニュースセンターは9日、北京行きのマレーシア航空機が消息を絶ったことに関連し、中国の最高指導部が8日、軍に対し、北京中心部に近づこうとする不審な民間機があれば撃墜するよう緊急命令を出したと伝えた。ニュースソースからしていささか眉唾ものだが、これが事実だとすればただ事ではない。北京では全人代が開催中でもあるし、このような説が立つこと自体、火のないところに煙はたたない、ともいえるだろう。

現在アメリカを含む8カ国が競ってブラックボックスの回収に向かっているから、それが回収できればかなりのことは明らかになる。根拠に乏しい前述の同センターの説はひとまず横に置いておくとして、僕はインテリジェンスの立場からあらゆる可能性を冷静に分析してみることにしよう。

まず現時点でマレーシア当局は事件、事故の両方の面から捜査中であるとしている。仮に単純な事故であるとすれば、パイロットがメーデー(緊急信号)も発信せずに急きょUターンを試みて墜落していったことになる。問題のマレーシア航空370便はB777型機で、飛行ログを調べてみたところ離陸から約50分後、2時2分に上空35000フィートの巡航高度に入ってしばらくした時点でぷっつりとデーターが消えている。

右主翼に故障歴があったということだが、機体の異変に気付いたパイロットが管制にも連絡をせず、メーデーも出さず(あるいは出せず)一気に墜落するという可能性はどれくらいあるのだろうか?日本航空でパイロットをしていた友人に訊いてみた。答えは「その高度からなら墜落しながらでもメーデーを出す余裕は十分にある。コーパイもいるので何の信号も出さないというのは通常では考えられない」とのことであった。

こうして僕の中では単純事故説の線は消えた。それが何であれ「異変」は「瞬時」に起こった可能性が高い。巡航中の航空機に瞬時に起きる異変といえば、ズバリ撃墜か爆発である。

FBIもテロの可能性を示唆して捜査に乗り出したのは、盗難パスポートでの乗客が2名いたせいもある。テロであろうがハイジャックであろうが、公海上で爆発してしまったということは犯行は未遂に終わったということになる。標的が北京であったという根拠はなく、あるいは乗っ取ってしまえばアメリカに向かうだけの十分な燃料も搭載している。だが犯人が死んでしまった以上、目的が何であったかを実証することは極めて困難だ。最も知りたいのは犯人の目的であるのに。

自爆テロ、あるいは爆発物を抱えてのハイジャックという自分の命と引き換えに犯行を企てるということは、相当な教条が背景にあるはずだ。それが何なのか。犯行グループの特定が難しければ彼らが目指した標的を知ることでも手がかりになる。仮に標的が北京の全人代だとすれば、犯行グループは北京の中央政権に弾圧されているイスラム系民族に同調した過激グループか、などと推論を進めていくこともできるが、標的が定かでない以上、それもままならない。

「異変」が発生したのは南シナ海上空である。それだけははっきりしている。この南シナ海といえば複数の国の軍事力が拮抗している海域であり、とりわけ中国軍は近年勢力を伸ばしている。各国のレーダー網が張り巡らされていて、うかつなことはできない公海上であるが、イザとなればスクランブル発進が可能な状態にある海域とも言える。また捜索が困難で、何かを隠すにはうってつけの場所でもある。

一般的に行ってインテリジェンスの活動には何かをアピールする諜報工作と、何かを隠す防諜工作があるが、今回の場合は諜報工作としては失敗、防諜工作としては成功ということになる。もしこのまま真相が明らかにならなければの話ではあるが。

もし仮に撃墜であるとすれば、犯行グループについては永久に明らかにならない可能性もある。爆発物を持っていたかどうかも検証できない。そもそも本当にテロリストであったかどうかさえも不明なままだ。まさに「死人に口無し」である。犠牲者とその遺族にとっては怒りの持って行き場も無い、全く救われない事態となる。

そんな事態だけは避けなければいけない。犠牲者の魂を鎮めるためにも、遺族の怒りの持って行き場を確保するためにも、真相を絶対に明らかにしなくてはいけない。これは人道上の問題として。

【3月11日追記】

 *日本経済新聞3月10日;
航空ジャーナル元編集長の青木謙知氏は「何かの理由で機長、副操縦士が共に地上と連絡できない状態が生じたか、瞬時に爆発などで機体が壊れたとしか考えられない」と分析する。航空評論家の中村浩美氏は「過去には金属疲労で機体が空中分解する事故もあったが、今回の使用機は古い機体ではない。経年劣化による事故の可能性は低い」とみる。

*共同通信は、北京でのテロが計画され、台湾のチャイナエアラインが反政府組織から電話を受けていたという情報もあると報じており、通報を受けた台湾当局は中国政府に連絡したとしている。

*朝日新聞3月11日:
香港に逃れた元民主活動家が主宰する人権団体「中国人権民主化運動情報センター」は9日、機内に爆弾を持った人物が乗り込み、北京上空で乗っ取って中国共産党の権力中枢部「中南海」に突っ込む計画だったが、発見されて自爆した可能性があると伝えた。ただ、根拠は何も示していない。

これ以上はキリが無いので追記は止めておきます。時期が来たらまた新たに書きますね。

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