2024年4月24日

よくある地域紛争ではない。単なる武力攻撃ではない。これはれっきとした侵略戦争であります。それも国際連合安全保障常任理事国である大国ロシアが、自国の軍隊を使って、2月24日隣国ウクライナに直接侵攻したのであります。こんなことは第二次世界大戦後、国連が誕生して以来、初めてのことです。

「力による一方的な現状変更の試み」は国際社会で決して許されないことです。当然ながら全世界の反発を買い、重大な国際法違反として一斉に非難しました。主要国はSWIFTからの遮断も含め、強い経済制裁をロシアに課しました。

この戦略は戦車でぐるりと国境に詰め寄り、ミサイルで攻撃しながら国境を越えて首都キーウ(キエフ)に迫るという、19世紀的な、驚くほど古典的な侵略でした。ウクライナ側には何の落ち度もなく、ロシア側の主張をどれだけ好意的に解釈しても、100パーセント一方的な侵略戦争でした。

子供や妊婦、女性や高齢者を含めて一般市民を無差別に攻撃し、多くの死傷者が出ました。明らかな国際法違反です。連日ウクライナを脱出する子供連れの難民や、キーウに残ってロシア軍と戦う18歳から60歳までの男性の姿が、離ればなれになりながら連日テレビやインターネットに映し出されます。

300万人とも400万人とも言われるポーランドなどの隣国に逃げた難民の支援が、大いに叫ばれ、全世界がウクライナ難民に向けて資金や物資を送っています。

ただ僕はこのウクライナ難民という言葉に、非常に違和感を感じています。シリア難民などとは違って、難民になる必要の無い人々だと思うのです。ウクライナは自分の国ではないか。自分たちの街ではないか。自分の家もあるではないか。堂々と住んで居ればよいではないか。

もちろん戦火の飛び交うなかで、現実問題として、生命を維持できない状況の市民が、隣国へ逃げるのは分かります。その人たちへの緊急的な援助が必要なのも分かります。しかし僕はあえて言いたいのです。難民になんかなるな。ウクライナに留まって銃をとれ。ウクライナを出て行くべきはあなた方ではない。ロシア兵の方だ。

ロシア兵たちの士気は概ね低く、大義のないウクライナ侵攻に、戸惑いを見せています。キーウ陥落も1ヶ月も経つのに達成していません。これはロシアの戦争ではなく、プーチンの戦争なのです。

ウクライナ人は1人たりとも難民になるべきではなく、一歩たりともウクライナから出る必要はない。NATOは今こそ団結すべき時です。デンマークやフィンランドも加盟しました。国際連合やNATOは大義のために毅然とした態度を取るのが、本来の目的であると考えます。

国連はもはや安全保障の面からは、全く機能していません。安保理常連理事国の中国やロシアが拒否権を発動するので、北朝鮮に対する強力な制裁決議案も出せずにいる、今や20世紀の理想を引きずった終わった組織です。ウクライナの大使が演説で言いました。

「いったい誰がロシアの加盟を提案したんだい? いたら手を挙げてくれ。確か我々はソビエト連邦の加盟は認めていたが、ロシアは国連に入れた覚えはない」

これは笑いを誘いましたが、あながち冗談では済まされません。台湾についても言えることだからです。そもそも戦勝国として国連に入ったのは、国民党が率いる中華民国であって、中華人民共和国ではない。にもかかわらず共産党が率いる中華人民共和国が、今ではちゃっかり安全保障理事会の常任理事国に座っている。

すり替わりの術です。これにより国連の安全保障理事会は、実質的に何の決議も出せない形だけの機関になってしまったのです。この国連を根本的に変えなければならない話は、長くなるので別にしましょう。

話を戻しますと、この戦争はロシアの戦争ではなく、プーチン一人の戦争なのです。この戦争が始まって以来、テレビで見かけるロシアのプーチン大統領の表情がおかしい、と僕は感じています。それまであった知性が全く見られず、目が据わって別人のようです。側近からも現状に関する報告には興味を示さず、ピョートル大帝など歴史の話ばかりしているそうです。

何かが乗り移ってしまったのでしょうか。それとも長年ロシア皇帝を続けたストレスから、サイコパスになってしまったのでしょうか。いずれにしてもこの病的なプーチンと話をしても無意味だな、というのが僕の率直な感想です。そして恐ろしいことにこの男は核ミサイルの発射ボタンを握っているのです。

ロシア国営第一テレビの視聴率は高齢者で異常に高いそうです。そして調査によると、40歳以上の国民の70パーセントがプーチン大統領を支持し、この戦争が正義の戦争だと信じているという結果が出ました。ロシア国内の反戦運動は、官憲により強引に鎮圧されていますが、インターネットを通じて若い世代には真実を知る者も増えているとはいいます。でも政権転覆には程遠いでしょう。

世界の秩序は変わり始めています。アメリカが「もうアメリカは世界の警察官ではない(オバマ大統領)」といい、長年僕らが信じてきた、アメリカの軍事力を背景とした国際連合とNATOによる冷戦後の秩序。自由と民主主義と人権を重んじる共通の価値観を持った世界秩序が、瓦解の直前にきているのです。

もう「ミッション:インポッシブル」のような組織が、悪の企みを潰してくれる時代ではない。「アルマゲドン」のようなチームが、宇宙から地球を守ってくれるわけではない。ハリウッド的な価値観で育った僕としては、非常に寂しい気もしますが、残念ながらこの価値観は20世紀の花火だったと割り切りましょう。

さて現実問題として、どうやってこの戦争の結末を考えますかね。アメリカのバイデン大統領が「プーチンという男は一国のリーダーを務めるのにふさわしくない」と発言して、たちまち「内政干渉だ、バイデンが決めることではない、ロシア国民が決めることだ」と大騒ぎになりましたが、これはバイデンさん、大失言でしたね。

一国の大統領の発言としては失言ではありますが、内心その通り、と思った人は世界中に多くいたのではないでしょうか。はたしてプーチン大統領が国内で失脚して、新政権が侵略を止めるのを待つか。うーん、気の長い話です。個人的にはプーチンに拳銃を一つ渡し、部屋の奥に案内してヒトラーのような幕引きを期待します。

ウクライナ東部の親ロシア人居住地一部だけを譲ってやって、どうにかロシア国内での世論を抑え、停戦あるいは終戦という道に持って行くのか。これは一番寝覚めの悪い解決法です。そもそもウクライナは1センチたりとも侵略されるべきではない。早い段階で人的被害を食い止める、という人道上の現実には即していますが、大義に反しているからです。

力による一方的な現状変更の試みは一切許されない

これは国際秩序を維持する上で、絶対に揺らいではいけない根本原則だからです。これを認めてしまったらすべてはおしまいです。中国人解放軍が台湾に攻め入っても、尖閣諸島や沖縄を奪い取っても、世界は文句が言えなくなります。

そんなことだけは許すわけにはいかない。だからウクライナには大義を守り抜いてもらわなければならないのです。難民に食料や生活物資が届いていれば、それでいいのか。難民を周辺国が受け入れればそれで解決か。いいや問題はそこではない。プーチンの戦争犯罪を裁くまで、この問題は終わらないと思います。

僕はゼレンスキーを応援したい気持ちから、彼がトレードマークのように着ているカーキ色のTシャツを、毎日着ています。すぐにでもキーウに行って、医療支援をしたり、人道援助をしたい。場合によっては銃をとってもいい。あるいはモスクワに行って反政府デモを画策したい。

地球の裏側で起こっていることなのに、なぜそこまで熱くなるのか。それは今、まさに尖閣諸島を取られる瞬間に居合わせる気持ちでいるからです。香港や台湾、南沙諸島で着々と進められている現状変更の試み、それらを喉元に突きつけられているからです。

独裁国家がその権力者の手によって領土を拡大することが、どんなに恐ろしいか。それに国際社会はどう立ち向かうのか。今ウクライナで試されています。

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