日本の全土を米軍基地にできる?日米地位協定の本当の怖さ

先日アメリカから来日したトランプ大統領が、日本の羽田空港ではなく米軍の横田基地に降り立ち、そこから入国したというニュースを聞いて「おやっ?」と思わなかった人は是非読んでください。トランプ大統領は他にも六本木の米軍ヘリポートなど、アメリカ軍施設を拠点に移動しました。

米軍基地は沖縄にあるだけではなく、全国にたくさんあります。東京だけでも南麻布のニューサンノーをはじめとして8カ所もあり、そこは治外法権でアメリカ合衆国に属していて、日本のものではありません。米国軍人や米国政府関係者などが自由に出入りすることができ、日本人は許可なく立ち入れません。

僕はその昔、南麻布にあるニューサンノーは、山王ホテルの別館か何かだと思い込んでいました。しかしホテルにしてはウェルカムな雰囲気がなく、アメリカ人しか出入りしないので、謎のビルディングだったのです。ある時、機会があってニューサンノーを訪れた時にびっくりしました。いきなりマシンガンを肩からかけた女性兵士と廊下ですれ違い、行き交う人は軍服を着ている人が大勢いることに気がつきました。

内部は赤坂のアメリカ大使館と同様に、何もかもアメリカ仕様です。米ドル決済のレストランに入るのにもセキュリティーが高くて、僕にピッタリと張り付いた担当の米軍関係者に連れられて入った目的の部屋以外は、立ち入り禁止で写真を撮ることも許されませんでした。

東京の都心に、こんなに大きな米軍施設があるなんて当時は驚きでしたが、矢部宏治氏の著書「知ってはいけない 隠された日本支配の構造」を読めば、納得がいきます。沖縄上空が日本ではなくアメリカ軍の管制下にあることは有名ですが、東京23区の一部を含む広範囲が、「横田空域」と呼ばれ、米軍機は自由にその空域で自由に演習ができるのです。羽田から離発着する日本の民間旅客機は、この空域を避けるように大きく迂回します。我々は「岩国空域」など驚くほど広範囲の日本の空が、アメリカの支配下にあるという、この現実を見つめなければなりません。

1952年のサンフランシスコ講和条約で、日本は第二次世界大戦後のマッカーサー率いるGHQの占領時代が終わり、独立を果たしたのだと教科書では教えられました。でも日本が独立したとされる1952年を挟む3年間は、朝鮮戦争のまっただ中でした。アメリカは日本を朝鮮戦争の前線基地と位置づけ、まさにアメリカ軍の不沈空母として機能させていたのです。

1960年の日米安保条約(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約)の改定で、日本はアメリカと対等な関係を結ぼうとしましたが、当時の岸信介首相は「基地権密約」と呼ばれる、口頭による密約を結ばざるを得なかったのです。それは有事の際には日本全土を米軍の基地として使える、という驚くべき内容でした。そもそも旧安保条約の時点で、戦争になったら自衛隊は米軍の指揮下で戦う、という「指揮権密約」を、当時の吉田茂首相は米軍司令と口頭で結んでしまっています。

「指揮権密約」と「基地権密約」この二つは、現在の日米地位協定(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域ならびに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定)の骨子となり、具体的には月に一度ほど行われる日米合同委員会で、行政レベルの問題として今なお効力を発しています。21世紀の現在でも、日本という国は、まったく独立前のGHQ占領時代と同一、軍事的にはなんら変わっていないのです。

朝鮮戦争というものがあったために(いや、あったと過去形で書くのはよくないですね。南北朝鮮は現在もなお戦争状態であり、休戦しているだけなのだから)、日本はGHQ占領時代から抜け出すことができず、ズルズルと占領時代スキームを現在も引きずっているわけです。

アメリカに文句を言ったところで聞き入れてもらえる訳ではありません。日本の真の独立は、朝鮮半島の戦争が終戦し、極東地域の緊張がなくなるまでは、実現することは難しいかも知れません。アメリカの言うなりに自衛隊を海外派兵させるようでは、ますます真の独立からは遠ざかっていきます。

対米隷属から脱出するのは容易ではありません。しかし歴代の日本を治めてきた自由民主党の首相たちがやり残したこの宿題は、誰かがやらなければなりません。アメリカ軍側に対してにNOと言える、肝の据わった国際感覚のあるリーダーの出現に期待します。

少なくともトランプ大統領のポチとあざ笑われるようなリーダー、時代遅れの武器を大量に買わされてのほほんとしているようなリーダー、国際的な方向が北朝鮮との「対話」に向かっているにもかかわらずトランプといっしょに「最大限の圧力」を掲げるようなリーダー、そのようなリーダーには、この宿題はこなせません。

厚木飛行場に降り立ったマッカーサーを出迎えるがごとく、横田基地に降り立ったトランプ大統領を、バンカーで転がってまで接待した安倍首相には、到底無理そうです。新しくまともな政権ができたら、まずは改憲よりも、日米地位協定の見直しに取り組んでいただきたいと思います。

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