日本が目指すべき観光立国の戦略

hounitigaikyaku2015

外国人観光客に日本を訪れてもらうことは、文句なしに喜ばしいことです。国際観光産業は労働集約型の輸出産業だからです。分かりやすく言えば、働くのは日本人で、入ってくるのは外貨です。ですから雇用と経済成長に貢献しないはずはありません。さらに日本に対する外国人との相互理解は、究極の国際安全保障につながります。一度でも観光したことのある愛着のある国に対しては、武力攻撃をしようとは思わないのが、人情というものだからです。

2015年現在の年間訪日外国人数は、1970万人を超えるほどに急増しました。と言っても、米国の7000万人、英国の3000万人にはまだまだ及びません。8000万人を超えるフランス、スペイン、イタリアなど超人気国には遠くおよびません。最近は増えたように思うかも知れませんが、今は中国人の秋葉原などへの爆買いに支えられた数字であり、本物の人気の点で、日本はまだまだ観光後進国と言わざるを得ません。

僕は国が成熟すれば、観光大国になるのが、正しい姿だと思っています。今の工業大国は、新興工業国に、いずれ労働コストの差で負けます。負けても良いんです。北欧の成熟した国々、フィンランド、デンマーク、オランダなど訪れる観光客で賑わっています。資源になるのは古城など文化そのものですから、工業原料のように追加輸入する必要も、産業機械のようにすり減って修理する必要もありません。ちょっとした知恵と工夫でいくらでも産業を最大化できます。

政府は10年前に観光立国推進基本法を成立させ、730万人だった訪日外国人旅行客を、2020年には2000万人に増やす予定でした。ところが昨年2015年でその目標に早々と達してしまったので、2020年の目標を倍の4000万人に、軌道修正しました。オリンピック効果も合わせて、いけいけどんどんという感じです。しかし手放しで喜んでいれば良いという訳ではありません。観光客の誘致には、それなりの施策を実行していかなければなりません。

果たして中国からのお客さんによる、秋葉原での爆買いが、望ましい観光立国の姿でしょうか? 既に中国政府は、日本からの炊飯器など電気製品をはじめとするお土産物に、入国時に関税をかける施策を実施しています。炊飯器ブームはまもなく落ち着くでしょう。欧米からの旅行者も、東京や京都といったいわゆる観光のゴールデンルートを訪れ、すし詰めの満員電車をはじめとする人混みの凄まじさに、うんざりとして帰ったという声も聞きます。今後は受け入れ側も軌道修正が必要なのです。

果たしてどのようなストラテジーが必要なのか。実は日本の本当の魅力は東京や京都といった大都市にあるのではないと僕は思います。四季折々にくっきりとした輪郭を見せる日本本来の自然。全国各地に多様な広がりを見せる充実した郷土文化。それらをあたかも各地の日本食を味わうように、じっくりと体験して帰っていただくことを、僕は提案しています。

ターゲットはずばり世界の富裕層。旅のスタイルは欧米式の長期滞在型です。そして味わっていただくのは、日本の『田舎』であり、もてなすのは地元住民です。さらにリピーター、常連客を重視します。その具体的な企画については、残念ながら企業秘密です(現在、僕が関わっているので)。詳細についてご説明できなくて申し訳ありませんが、この方向性こそが官民あげてのビジネスチャンスだと、僕は考えています。

企画が実現したら、またみなさんにお知らせするつもりです。

チャオ。

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3 comments to “日本が目指すべき観光立国の戦略”
  1. 以前、テレビ東京の「カンブリア宮殿」で取り上げられていましたが、日本は、文化財の維持修復にかける予算が格段に少ないらしいです(http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/20150521.html 2015年5月21日「文化財修復 小西美術工藝社」の回)
    「古びたるがよし(金ぴか極彩色は相対的に評判が悪い)」という審美感も悪いとは言いませんが、日光東照宮が修復を怠らないおかげで今の人気にあることを今一度考えねばなりません。
    番組の中で紹介された劇的な例(テレビ東京カンブリア宮殿のサイト、バックナンバー記事より引用)
    >小西美術工藝社の修復によって激変した寺社がある。埼玉県熊谷市にある「歓喜院(かんぎいん)」だ。建立されてから260年が経ち、本殿はボロボロだった。しかし、2003年から7年がかりで、総額13億円かけて修復した結果、なんと国宝に指定されたのだ!観光客数のデータさえなかった寺は、年間82万人が訪れる観光名所に変身。

    私の住み処である名古屋では現在天守閣の木造再建問題が持ち上がっていますが、その影で見落とされ荒れるがままになっている文化財は多いと見ます。

  2. 豪雪も現地の人にはやっかいですが、世界的にはものすごい観光資源だということです。
    「体験型観光」ということに引っかけて、「除雪体験ツアー」をすれば、高齢化で除雪困難な雪国の住民にも喜ばれるかもしれません。
    「民泊」など宿泊体制や、狭い道路、駐車場など交通インフラもまた大変革を迫られます。高速道路と新幹線があれば終わりではありません。

  3. 一昔前は、「観光産業しか無い」というとド田舎のようなマイナス感覚でしたが、今や「観光産業が豊か」といえば文明国の代名詞のようなプラス感覚に変わりました。

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