今さらながら安保法案の全文を読んでみた

IMG_0732もう衆院を通過してしまいましたが、頑張って官邸のサイトまで行ってみました。そして、いわゆる安保法案と言われる20個の法律の改正部分と、1個の新規の法律を読んでみました。

なんだか国会の答弁を見ているだけでは、イメージに流されそうで心配になってきたからです。野党のツッコミと、それをかわす無意味な首相の答弁。結局は数の勝利。街では法案反対のデモ。そういうのを見ていると、いかにも好戦的な安倍首相が作ったとんでもない法案に見えてきます。

でも、さて僕自身はこれを安保法案と呼ぼうか、戦争法案と呼ぼうかと迷った時、そういった周辺のイメージだけで決めるのは、ちょっと危険な気がしたからです。迷ったら原本にあたれ、というのが僕のスタイルです。丸一日つぶれました。自衛隊法等改正の新旧対照表だけでも131ページあって、さすがに疲れましたが、スッキリしました。

まず、現行法の改正案ですが、これだけでも20の法律を変えなければならないのです。

  1. 自衛隊法
  2. 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律
  3. 周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律
  4. 周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律
  5. 武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律
  6. 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律
  7. 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律
  8. 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律
  9. 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律
  10. 国家安全保障会議設置法
  11. 道路交通法
  12. 国際機関等に派遣される防衛省の職員の処遇等に関する法律
  13. 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律
  14. 武力紛争の際の文化財の保護に関する法律
  15. 原子力規制委員会設置法
  16. 行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
  17. サイバーセキュリティ基本法
  18. 防衛省設置法
  19. 内閣府設置法
  20. 復興庁設置法

主に自衛隊法と周辺事態法系、武力攻撃事態系の改正です。第一印象は、僕が思っていたよりも既に法体系は整っていたんだ、ってことです。集団的自衛権に関わる部分を細かく修正したという程度です。感想は、お疲れ様、という気分。読みたい方はこちらからどうぞ。

そしていよいよ本命は、新しく作ろうとしているこの法律案です。

  1. – 1 –国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律

これがまさに外国の戦争に首をつっこむ、と言われる問題の法案です。

この法律は、国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるものに際し、当該活平和動を行う諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等を行うことにより、国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とする。

という目的の通り、内容は思っていたよりも抑制的なものでした。この法案を読んで第一に感じたことは、要するにグローバルスタンダードにしたいんだな、ということです。グローバルスタンダードと言えば聞こえはいいけど、世界基準が必ずしも良いものだとは限りません。そもそも日本は今までこの世界基準よりずっと高みから、崇高な平和主義をつらぬいてきたのです。その独特の高い位置からストーンと落ちて世界基準にまで成り下がることが、本当に良いことなのかどうか。

世界は戦争にまみれています。日本のように平和な国は珍しいくらいです。その高みからあえて下がって、国際レベルまで落とすこと。これはもしかしたら、悪しきグローバリゼーションの一環ではないかと思えてきました。TPPももしかしたら、悪しきグローバリゼーションの一つかもしれません。国際安全保障も輸出入も、日本だけが独自の道を歩むことが、難しくなってきた時代なのかもしれません。

さて安保法案と呼ぶか戦争法案と呼ぶか。これは僕はどちらでもいい気がしてきました。所詮イメージ操作で、ポジティブな人は安保法案と呼び、ネガティブな人は戦争法案と呼んでいるだけです。

では違憲か合憲か。それは明らかに違憲です。自衛隊が合憲であるとする根拠は、憲法前文にある「国民の生存権」であり、それが第9条に関わらず守られるのは自明の理、という考え方からきています。つまり国民の命が危険にさらされた場合に限り、自衛権を発揮できるのであり、他国の戦争に参加できるところまでは、憲法前文も述べていないからです。

徴兵制があるかどうかは、この法案を読んだ限りでは、あるとは言えないでしょう。というか徴兵制に関係する文言はどこにもなかったからです。憲法に照らし合わせても、徴兵制など法案化できるとは思えません。戦前復古趣味の強い安倍さんだから、憲法なんて無視して徴兵制を作りそうだ、という疑心暗鬼でもあるのかも知れません。僕自身はこの法案から徴兵制を読み取ることは、できませんでした。

結論としては、安保法案は思ったよりも好戦的なものではない。だが憲法違反である。ということであります。そして安部首相は本当に説明が下手なんだなあ、ということ。僕だったらもっと上手に説明できる気がします。

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One comment to “今さらながら安保法案の全文を読んでみた”
  1. 改正自衛隊法案、第3条「自衛隊の任務」
    「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して 我が国の平和及び安全の確保に資する活動 」
    第76条、
    「武力攻撃 生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態に際 事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及 して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛 び国民の安全の確保に関する法律云々」
    およびその詳細としての1項1号2号
    1、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は我が 国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫し ていると認められるに至つた事態
    2、 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸 福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態

    このあたりが率直に存立機器事態」と「日米同盟下での集団的自衛権」を規定して、問題視されていると思います。
    この条文では、明らかに「周辺事態」をはずしたグローバルな自衛への拡大と、集団的自衛権を明記したという根拠になる具体的表記でしょう。

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