2024年4月19日

ドラッグにハーブなんて用語を使っていいのか?

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h0728-3a「脱法ハーブ」なんて言葉がマスコミを飛び交い始めた時、僕は非常に違和感を覚えた。「脱法ドラッグ」ではないのか、いや「新作ドラッグ」だろう。実態は完全に覚せい剤などと同じドラッグなのに、違法業者たちが売らんがために創りだした用語「脱法ハーブ」という肯定的な表現を、それをそのままマスコミが使うことで、イメージを甘くしているのではないか。

日本でドラッグをハーブと呼び始めた始まりは、マリファナにある。ほぐした乾燥大麻の葉は台所などにおいておくと、一見ハーブかお茶のように見える。そこで何も知らない人に「これなあに?」と訊かれた時に、ハーブの一種だよ、とかお茶だよといえば信じこませることができた。実際に特有の香りもあり、大麻に限って言えばハーブと呼べないこともないだろう。

しかし今日本で新作ドラッグを「脱法ハーブ」という名で流通させているのは、明らかに違法なカムフラージュ薬物である。ハーブというのは香りや味を楽しむための素敵なものだが、このイメージの良さを流用しているのである。本物のハーブ趣味やアロマ趣味の人から言わせれば許せない冒涜だろう。何よりも無知な人にドラッグがあたかも安全であるかのような誤解を与える点で、不適切な呼び名であり、マスコミは使うべきではない。

そのドラッグとしての力価は本物の覚せい剤や違法な合成麻薬と同等か、それ以上だという。また旧来からある麻薬の場合、変な話だが用法用量が決まっていて、誤った使い方をすることも少なく車の運転などはしない暗黙の慣習があったが、新作ドラッグの場合はとんでもない量を摂取してしまう危険性もあり、初心者や未成年の間で流行していることを考えると、その危険性は恐るべきものがある。そもそもハーブ(植物)などではなく、全てが合成麻薬なのだ。

ようやくNHKが「脱法ドラッグ」という呼称をメインに使うようになり、二次的に「脱法ハーブ」という用語と併用するようになった。そもそも僕なんかの感覚だと「脱法ハーブ」なんて呼び名をすべてやめてしまえばいいのに、と感じる。しかし担当者に言わせると、既に世の中にその呼び名で流通してしまっている以上、その呼び名をあえて使わないと逆に「脱法ドラッグ」と「脱法ハーブ」は違うもの、という誤解を与えかねない。「脱法ハーブ」=「脱法ドラッグ」であるという認識を広めることは必要だという。

新作ドラッグは既に違法ドラッグとして規制されているドラッグを、化学的にちょっと変化させて別の物質に変えただけで、法の網の目をくぐる形で作られている。規制する法の弱みは、それを違法とするためには成分分析、実効実験などに数ヶ月から長いと一年以上もの時間がかかっている点である。その時間差を利用しているからいたちごっこだ。

いっそのこと法律の条文に「それに極めて類似する薬物でありかつそれと同等の効果がある可能性が極めて高いと考えられる薬物」といった一文を入れて、包括的に取り締まれないものかと思うのだが、そう考えるのは僕が薬事や法律の素人であるからだろうか。誰か法律に詳しい人に教えていただきたいものです。

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(7月23日追記)

厚生労働省と警察庁は7月22日、「脱法ドラッグ」や「脱法ハーブ」に代わる新しい名称を「危険ドラッグ」に決めたと発表しました。このネーミングには様々な意見があるものの、変えないよりはマシかも知れません。ただし大きな落とし穴があります。

新しい名称というのは、上からどんなに定着させようとしても必ずしも定着するものではないのです。一例を上げれば昔、JR東日本が膨大な広告費を使って「山手線」を「E電」と呼ぼうという大キャンペーンを張ったことがあります。どころがどうでしょう。一般大衆が受け入れない限り定着しないのが新語というもの。結局その「E電」という名称を使っている人は今では見かけません。

もっと恐ろしい落とし穴があります。「危険ドラッグ」=「脱法ハーブ」という認識を若者にきちんと定着させなければ、むしろ逆効果になってしまいます。別のものだと勘違いされたら大変なことになります。「これは危険ドラッグじゃありませんよ。法律に反しない、いわゆる脱法ハーブですよ」という言い回しで販売する業者が増える危険性があります。

下線をつけたのでお解りかと思いますが、ちょっと言い回しを変えるだけで、それこそ法の網の目をくぐることがいとも簡単にできてしまいます。新しい名称に変えただけではこの問題は解決しないでしょう。薬物の恐ろしさを徹底的に知らせていくことが大切なのはもちろんのこと、好奇心から薬物を求める人間と儲けようとする業者の昔からある構造を、抜本的に変えていくアイデアが今求められているのだと再認識しました。

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