2024年4月20日

わが家に自家用ジェット機が、ついにやってきました。
「六本木に住んでるセレブなら当然、自家用のジェット機くらい持つべきだ」
というアメリカ系の某センパイのおすすめによるものです。

ところがわが家はいちおう港区六本木一丁目に住んではいるものの、狭い部屋で汲汲と暮らしている、貧しき庶民です。
でも農家には必ず飛行機が一台ある国の常識からすれば、飛行機も持っていない家庭なんて、セレブ家庭としてありえないというのです。

支払える金はない、そもそも飛行機操縦のライセンスなんて持ってない、とてもじゃないが買えるわけがありません、とセンパイに申し上げました。
でも最新鋭のジェット機を格安に売ってやるんだ、操縦ライセンスもただ同然で与えるから心配するな、とウインクされ、結局センパイに逆らえずに自家用ジェット機を買うことになりました。

なけなしの金を長期ローンで払って、分不相応な自家用ジェット機をセンパイから買う契約を結びました。
さすがに新品で最新鋭のジェット機を見たときには、興奮しました。
たった一日の簡単な講習で、操縦ライセンスも正式に交付されました。

さて、いよいよ初飛行です。
国際航空規約の、法的処理も、ぜんぶセンパイがやってくれました。
おかげで合法的に飛行機を離陸させられます。
緊張と興奮の時がおとずれました。

最新式の自家用ジェット飛行機といっても、実態はどうも747-400ジャンボジェットにしか、素人目には見えないすばらしい巨大飛行機です。
スイッチがたくさんありますが、センパイは「現代のハイテク飛行機はオートパイロット(自動操縦)完備だから心配するな」といって、僕の肩に手をおいて安心させてくれました。

初フライト。
機長は僕、副操縦士は奥さんです。
フライトシュミレーターで練習しただけあって、無事に離陸に成功!
あとはオートパイロット(自動操縦)に切り替えて、コーヒーを一服してゆったりしておりました。

航路がどうなってるのかは知りませんが、目の前には小回りのきく各国の戦闘機がちらちら見えはじめました。
ちょっと不安になります。
おまけに、日本人初の自家用ジャンボジェット操縦という話題性からでしょうか、マスコミのヘリコプターが、目の前を右に左に、すばしこく横切ります。
ちょっと不安になって、僕は奥さんに訊きました。
「こういうばあい、法律的にはどっちが避ける義務があるんだっけ?」
奥さんは分厚いマニュアル(英語版)を大急ぎでめくって、言いました。
「あなた!たいへんよ。法律上こっちが避けなきゃいけないの!」

そんなこといわれたって、慣性の大きいジャンボジェットが方向を変えるには、舵を切っても数分はもっちゃりと時間がかかります。
目の前を1秒単位で素早く左へ右へと、思いのままにぶんぶん飛び回る小型機やヘリの動きには、とてもじゃないけど追いつけるわけがありません。
何よりもいまさら自動操縦をオフにして未熟な自分がジャンボジェット機の操縦桿を握るなんて、正直言って僕自身がびびってしまっていて、舵を握ろうとする手がためらって震えているのがわかりました。

法律的にはこういうとき、自分が舵を握らなければならない。
そうだ。
舵を握らなければならないのだ。
僕が意を決してオートパイロットのスイッチをオフにしたのは恥ずかしながらヘリの接近に気がついてから10分後、自分で操縦桿を握ったのはその1分後、舵を切ったのはさらに1分後でした。
その直後、なんとマスコミのヘリコプターに当たってしまったんです。

あちゃ~~~~~~っ。

罪のない一般市民が二人乗っていたようです。
みるみる地上に落下していく民間機をみおろしながら、ああ、この人たちの命を奪ってしまったのは、僕なんだな。。。
そう思いながら、僕の意識は遠のいていきました。


以上、すべてフィクションです。
ただ、きっとイージス艦「あたご」の艦長はこんな気分だったのかな~と。
なんとなく、以前イージス艦問題の日記を書いた時、まるで大手マスコミみたいに一方的に護衛艦艦長の責任にしか触れず、本質的な原因に気がつかぬふりをしてよい子ヅラしたままキレイゴトでまとめようとした自分がゆるせなくなってきて、ちょっとしたフィクションを作って表現してみました。

タイトルに【F】とつけているのは、この話はフィクションです。の略。
実在の人物団体とは一切関係がありません(笑)

あなたのコメント

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください