6月12日シンガポールの行方

本日は5月27日です。このごに及んでドナルド・トランプと金正恩による米朝首脳会談を、中止するとか、いや行うとか、毎日のようにニュースに出ています。まあ首脳会談というものは、会ってしまえばそれが結論。会って何かを話し合うためのものではなく、二人が会ったらおしまい。それまでの6月11日までが勝負です。準備として条件や内容をにつめる作業をするわけで、その過程でブラフや駆け引きも熾烈に行われるわけです。

今日の時点では、ボールはトランプ大統領のコートに入っているようです。トランプの考えている最大のメリットは、秋に行われる中間選挙で支持率をアップすること、おまけとして国際社会での評価を高めること。もちろん朝鮮半島の完全非核化による国際安全保障上のリスクを取り除くというのが建前です。

金正恩としては昔からアメリカ合衆国大統領と会談し、自国の平和を保障してもらうことは悲願だったわけですから、とにかく会いたい。そのために核ミサイル開発をしてきたのだ、と言っても過言でないくらいです。今回のトランプからのお誘いは、喉から手が出るほど待ち望んでいたのです。

もちろん金正恩の現体制が認められると言うことが、北朝鮮の絶対条件で、2003年のリビア交渉の再来にはなってもらっては困ります。リビアのカダフィ政権が制裁解除と引き換えに大量破壊兵器を手放したものの、リビアではこの後、2011年に政権が崩壊し、最高指導者のカダフィ大佐が殺害されました。金正恩は自分とカダフィ大佐を重ね合わせているかもしれません。

北朝鮮が窮鼠猫をかむ、というデリケートな状態にあるのに対して、アメリカ側は完全非核化の要求条件を、さらに厳しくしていくと思われます。ジョン・ボルトン大統領補佐官は、核兵器のみならず生物化学兵器に関しても放棄するよう求めました。さらにアメリカは北朝鮮の金正恩の背景にある、中国の習近平の存在を注視しています。朝鮮半島が南北統一したら、そこは中国の影響力の極めて高い国になるわけで、事実上中国の属国としてしまうことまで、習近平は念頭に置いているかも知れません。

今の時点で、アメリカと北朝鮮それぞれが出しているコメントは、かつてのような敵意をむき出しにした誹謗中傷ではなく、友好ムードの会談に向けたコメントに変わっています。それはこの時期だから当然な訳でして、いちいちニュースにするまでもないことでしょう。

それよりもはたして、本当に6月12日にシンガポールで米朝首脳会談が行われるのか、という大前提のレベルでの話が重要です。僕はぶっちゃけた話、会談が12日に行われる確率30パーセント、中止または延期になる確率70パーセントと予想しています。もちろんシンガポールでの準備は、着々と行われています。12日に終わらなければ翌13日まで続けてもいい、とトランプ陣営は発言しています。

それでも6月11日までのすべての時間を利用して、安全保障担当補佐官のボルトンは、北朝鮮の動きをチェックし続けるでしょう。そして少しでも利益にそぐわないと考えたら、米朝首脳会談の即時中止を進言することでしょう。キャンセルは当日までできます。そしてキャンセルというこのカードは、最後まで大切に持っているだろうと僕には思えます。

ネゴシエーションは12日に行われるのではなく、今行われているのです。アメリカはこの交渉を、外交の専門家である国務省ではなく、安全保障の専門家のボルトンにやらせています。トランプの思いつきで片がつくほど、北朝鮮問題は甘くはありません。今回の北朝鮮問題については、安倍首相は蚊帳の外、といわれるくらい関わらせてもらっていません。拉致被害者問題などどこかへ忘れ去られたかのようです。

こんな状態での米朝二国間和平が、もし結ばれたとしたら、我々は手放しで喜ぶわけにはいきません。米国と中国という二つの超大国が世界を支配する時代に乗り遅れず、日本の立場を守るためには、蚊帳の外にいて眺めていてはいけません。参加しましょう。韓国も参加しています。中国も参加しています。参加することに意義があることもあります。このままでは、ますますアメリカの属国としてしか動けない日本になってしまいます。

米朝首脳会談が行われるにせよ、中止されるにせよ、必要なのはその課程における存在感です。今の日本には、残念ながらそれがありません。

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