ドナー登録(臓器提供)してみる

心臓移植、肝臓移植など、臓器移植手術で貴重な命が助かるケースは、今の医学ではさほど珍しくありません。ドナー(臓器提供者)さえいれば、医学的には別に高度な手術ではなく、昔から難しくなく行われてきました。しかし自分の死後に新鮮な臓器を必要な人に寄付しますよ、という意思表示(いわゆるドナー登録)をしている人の割合は、日本の場合は極端に少ないのです。それが今、問題になっています。

ヨーロッパ諸国の数十分の一。アメリカの五分の一。中国の半分。先進国の中では飛び抜けて臓器提供者が少ないのです。理由はいろいろありますが、一つには万が一の死の後に臓器を提供するという、本人の意思表示の仕方が、いまいち普及していないのではないかと考えられます。僕は健康保険証の裏に小さく「臓器提供するを選択」「すべて」「自筆署名」を記入していますが、それだけでは不十分な気がしてきました。

交通事故で死んだときなど、健康保険証を携帯していないとき、医師はどうやって本人の意思を知り得るのでしょうか。急を要する時に、死んだばかりの人の、生前の意思を確認するのは簡単ではありません。個人情報ではありますが、素早くすべての医師がアクセスできるところに、明示的にドナーの意思が書かれていなければ意味がないのです。そういえば運転免許証の裏にも記入するところがあったな、と思い出して、先ほど記入してみました。

運転免許証。これなら毎日携帯しているから、いざという時に役立つだろう、と思ったのです。でも誰もが自動車の運転免許証を持っているわけではありません。おまけに小さなカードの裏面の小さな文字の合間に、ボールペンで自筆署名するのは、老眼の僕には簡単なことではありませんでした。さらにマイナンバーカードにも同様の記入欄がありましたが、そちらはさらに小さく、顕微鏡で見なければ分からないような記入欄でした。なんで役所の書類の記入欄は、どれもこれも縮小コピーしたみたいに小さく、書きにくくなっているのかと不思議に思います。

頑張って記入しましたが、それでも僕を看取った医師が、僕の運転免許証やマイナンバーカードを確認してくれるとは限りません。ITの発達した現代だから、何かもっと良い方法があるのではないかと探してみたら、ありました。iPhoneの「ヘルスケア」というアプリの中に「メディカルID」という項目があり、臓器提供の意思を選択することが出来るようになっていました。さっそくそこでも「臓器提供する」を選んでおきましたが、医師や家族が、どうやってその情報にアプローチできるのか、甚だ疑問が残ります。でも意思表示しないよりはマシです。

ドナーカードの記入の際に是非お願いしたいのは、「特記欄」に「すべて」とひとこと書き加えることです。これで皮膚や心臓弁膜なども、臓器として提供できるようになります。意外と知られていないのですが、これを書き加えておかなければ、心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・眼球、以外のどの臓器も提供できないのです。もし自分の死後に残された身体の一部でも、何でも良いから誰かの命を救う役に立てたい、と思うならば、書き加えておきましょう。

もちろん「私は、臓器を提供しません。」を選ぶことも出来ますが、こんにちの日本のドナー登録の少なさを考えると、余った臓器を人命救助に役立ててくれるなら役立てて欲しい、と僕は個人的に思います。宗教的な理由で臓器を提供できない人もいるかも知れません。でも臓器移植手術を受けたい人が順番待ちで列をなしている現状。国内では臓器が手に入らないため、アメリカなど外国に移動して、移植手術を受けているという実態。それに対して日本人は臓器を金で買っていく、と非難されていること。それらを考えると、日本人のドナーは一人でも多い方が良いと僕は思います。

今のところネット上で正式にドナー表示をする方法として、一番期待しているのが、厚生労働省の外郭である、公益財団法人日本臓器移植ネットワークのサイトです。

日本臓器移植ネットワーク

ここで手続きをして、ドナー登録カードを持っていれば、より多くの医師に自分の臓器提供に関する意思を伝えることができそうです。でもお役所仕事で、結局は肝心な情報を伝えそびれるような、一抹の不安も隠せません。

そもそも日本の臓器移植手術にとって、最大のネックになっているのは、法律そのものなのです。現行法では、臓器移植に際して「脳死」や「心臓が停止した死」を判定するには、移植手術をする医師以外の二名以上の医師による死亡診断が必要である、とされています。この条件を満たすには、よほど大きな病院に担ぎ込まれ、その病院がよほどヒマでなければ不可能だと思います。この法律を改正しない限り、日本で臓器提供希望者が、現実に臓器提供することはかなわないでしょう。

まだまだ普及に時間がかかりそうな日本の臓器提供の実情。どうすれば自分が「脳死後および心臓が停止した死のいずれでも、移植のためにすべての臓器を提供します」という意思をアピールできるのでしょうか。とりあえず僕は、自分の公式サイトにこれを発表することで、僕が万が一の時に、より早くより多くの医療機関に情報が伝わればいいなあ、と思う今日この頃です。

###
ニュース、みてますか? -プロの「知的視点」が2時間で身につく- (ワニブックスPLUS新書)
クリックでアマゾンへ飛べます。
896円
読めば明日からあなたのニュースの見方が変わります!

あなたのコメント

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください