共謀罪が強行採決されてしまった今こそ、私たちは腹をすえよう

手遅れだったかもしれません。犯行や犯行準備だけではなく、人間の心の中までが警察による捜査開始の対象になる、異例の恐ろしい法律。同様の法律は、戦前の思想統制に使われた治安維持法ぐらいしか例を思いつきません。この法案に対し法律の専門家である日弁連が反対声明を出し、多くの市民団体が反対声明を出し、国連からも人権侵害の危険があると指摘されましたが、安倍政権は全て無視し、数の力による強行採決を行いました。数の力の政権ですから、参議院もまもなく通過するでしょう。

「話し合うことが罪になる」とはどういうことでしょうか。人の心の中の思想や考え方にまで、国家が踏み込んで捜査対象にするということですから、今の政権に対する反対意見を持つ人が互いに意見交換するだけでも、極端に言えば共謀罪として警察の捜査を受けることがあり得ます。例えば床屋で世間話に、あるいは居酒屋で飲み友達と、「安倍政権はダメだね。政権を交代させなきゃ」と話したとします。それを誰かが警察に密告したら、「国家転覆の罪を犯す危険性があるかもしれない」ということで、捜査対象にされてしまうことも、共謀罪成立以降には、理論的にはありうるでしょう。

原発反対運動や、労働運動も、反社会的とみなされるかもしれません。いったん警察の捜査対象になったら携帯やパソコンなど通信の盗聴、身辺調査、職場やプライベートの交友関係の洗い出しなど、実に迷惑な状況になります。それがうっとおしいからといって拒否したら、公務執行妨害として逮捕されるかもしれません。人の心の中にまで警察が踏み込めるようになったというのは、そういうことなのです。

与党自民党は、「一般人にまで捜査が及ぶことはない。あくまでテロなどの犯罪を犯すと思われる集団を監視するだけだ」と言います。しかし捜査対象が「一般人」か「犯罪を犯すと思われる集団」かは誰が判断するのか。それは実際には警察の一存です。誰かから怪しいと密告されたら、警察から携帯やパソコンも調べられ、あらゆる会話や通信が傍受されることになります。テロが何かも明確ではありません。安倍首相はFacebookで「朝日新聞は言論テロだ」という記事に、いいね、をつけたという記事を読んだこともあります。

ここまで書いてきて、僕がもっとも恐れることは、これを読んだ皆さんが自分の意見を公の場で言うことに、躊躇するようになることです。共謀罪で取り調べられたらうっとおしいから、政府に反対する意見は控えよう、なんて考え始めては絶対にいけません。それをしてしまったら、権力者の思う壺です。

ひるんではいけません。世の中について思うことは、これまで通り、いやこれまで以上に声を大にして、世間に発信していこうじゃありませんか。そして集おうじゃありませんか。「一般人の思想や活動に影響するものではない」と政府は明言しています。それを信じるなら、原発再稼働反対や、辺野古基地問題、労働運動など様々な市民活動を、いくら積極的に行っても、決して共謀罪の捜査対象にはなる心配はないのです。もしそんなことで逮捕されるようだったら、その時こそ立ち上がって無実を証明して見せ、共謀罪の適用範囲を明確化する判例を残すべきです。

とはいえ、一般の日本人は、羊のようにおとなしい方々が多いようです。FBで安倍政権に批判的な記事に「いいね」をつけたら公安にマークされるの?と真顔で聞いてきた人がいました。もちろんそんなことはありません。この共謀罪(テロ等準備罪)も、我々の今後の投票行動によっては、一度可決されても廃案にする法案を再度提出し、無くしてしまうことだってできるのです。この法案に反対票を投じた自民党議員、棄権をした自民党議員もいます。そういう議員に、次回の選挙では投票するのです。賛成した議員は皆落選させようではありませんか。

支持したい野党がない、という声をよく聞きます。それは僕も同じです。でも安倍政権の独裁体制がもたらす弊害があまりにも大きく、安倍首相自身の人格に信頼がおけず、このまま自民党内で自浄作用が働かないならば、自分の選挙区であえて好きではない野党の議員に一票を投じるのも、一つの良識ある選挙ではないかと思い始めています。

僕は今までそのような消極的な政権批判方法を、あまり好ましいとは思ってきませんでした。しかし今日のこの状況で、日本が大日本帝国時代の人権を軽んじる方向へと進んでいくのなら、安倍政権の独裁を止めるためにあらゆる選択肢を、国民は選ぶべきだと思います。それは単純に、野党に投票する、というシンプルなものであるかも知れません。

とにかくみなさん、共謀罪など恐れることはありません。堂々と発言しましょう。今こそ私たちが腹をすえる時なのです。

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One comment to “共謀罪が強行採決されてしまった今こそ、私たちは腹をすえよう”
  1. テロ計画者が、手紙でやりとりしていたらどうするのでしょう。検閲は憲法の厳禁事項なので、堂々と「共謀」できるわけ。
    各都道府県の自民党公明党事務所、議員事務所へデモをかけましょう。

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