2024年4月24日

それでもトランプ新大統領にNO!と言い続けることはできる

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日本時間の今朝未明、ドナルド・トランプ新大統領が就任演説をし、名実ともにアメリカ合衆国のリーダーになりました。70人もの議員が就任式を欠席し、恒例の国家を歌うミュージシャンも、有名どころは全て断られて16歳の学生が歌いました。100を超える団体がトランプの就任に反対するデモを行い、歴史上「最も歓迎されない大統領」によるアメリカ合衆国の分断が浮き彫りになったのです。

就任当日にTPP環太平洋パートナーシップ協定に離脱を表明し、オバマケアを無効にする大統領令に署名するなど、さっそく大統領権限を行使して「アメリカ第一主義」を旗印にした政策を実行に移しています。その個々の政策についてはあちこちに書かれていますので、ここでは省略します。それらをひっくるめて、僕はここでトランプ新大統領がいかにアメリカ合衆国にとって、また世界にとって最悪であるかを、書かずにはいられません。

通例だとアメリカ人は、大統領就任から100日のあいだは、ハネムーンと呼んで大統領にとりあえず好意的な評価をする時期です。しかしトランプ新大統領の場合はそれも難しいかも知れません。トランプ大統領の就任演説は、ひたすらアメリカ合衆国の分断を修復し、アメリカ合衆国を一つにまとめるメッセージに終始していました。それだけ実際のアメリカ合衆国は、トランプ派とアンチ・トランプ派に大きく分断され、修復不可能な状態にあることを意味しています。今のところ閣僚人事も難航し進んでいません。議会も共和党さえ分断されて、トランプにNO!のスタンスを示す議員がいるからです。さらにトランプはアメリカの大手メディアを敵に回しています。またアメリカを裏で動かすといわれる軍産共同体からも見放され、まさに「裸の王様」の状態なのです。

それでもまがりなりにも一度正式に大統領に就任した以上、どうにかしてトランプとうまくやっていこうと、世界各国の首脳や財界人はとまどいながらも、現実路線を模索しています。大規模なインフラ投資や、大幅な法人税の引き下げなど、経済的にプラスに評価できる点を見つけようとしています。トランプだって就任したら選挙の時のような過激な主張を引っ込めて現実路線になるだろう、と楽観視する傾向も高まりつつあります。しかしそんな期待もハネムーンの100日間持てば良いほうだと僕は考えています。彼は「裸の王様」のまま、自分のTwitterで、その時々の思い付きをつぶやき続けるでしょう。そんなことをすれば政治の混乱を必ずきたします。また財源もないのに大幅減税を行ったら国が財政破綻するのが目に見えています。さらにアメリカ・ファーストといった保護主義の波は世界各国に及びますから、EUの各国もイギリスのみならず、フランスも、ドイツも自国ファーストの右派政権になり、原始的な世界秩序の時代に逆戻りしてしまいます。良いことはなにもありません。

トランプ氏を嫌う人は、徹底的に彼を心底嫌います。民族、宗教の差別主義者であり女性蔑視の人間性、そう、人間性が嫌われているのです。僕もトランプはどうしても人間として好きになれません。顔が嫌い。雰囲気が嫌い。発言や態度が嫌い、なのです。もちろん自分の好みのタイプじゃないから、という理由だけで、トランプの大統領としての適性を評価するのは、フェアではないかも知れません。人間性がどうであれ、大統領の職務をきちんと果たしていれば、正しく評価すべきなのは言うまでもありません。しかし今までの歴代アメリカ合衆国大統領が守り抜いてきた、自由・博愛・平等といった普遍的価値感を、共有しないような人間は、大統領としてリスペクトされることはありえないと僕は思います。

アメリカ国内の雇用増加を目標にし、移民を排除し、貿易には高い関税をかける、などの政策の良し悪しを論ずる以前の問題なのです。人間として信頼できない。人間としてリスペクトできない。そんな人物の顔をあと4年間も見続けなきゃいけないのかと思うと、アメリカ合衆国の国民がとても気の毒です。

日本人である僕自身にとっても、アメリカという国はかつて好きな国の一つでした。アメリカの音楽、アメリカの映画、アメリカの文学、アメリカの科学技術・・・。アメリカの音楽は愛を歌い、自由を歌い、ハリウッド映画は時には素晴らしい娯楽映画として人類愛や世界平和を描いてきました。そんな個人的に感じていたアメリカのプラスイメージを、トランプによっていきなり土足で踏みにじられた気持ちに、僕は突き落とされました。僕にはアメリカ国民でもないのに、なんとなくアメリカ大統領たるもの=リスペクトできる人物であって欲しい、という願望が、どこかにあるのかも知れません。

トランプ大統領に対する憎悪の気持ちは、彼の過激な政策のため、というよりも、僕個人の感性によって引き起こされている気がします。もしかしたら本当にアメリカを、世界を良くしてくれるかもしれない、クリントンよりはマシだったかもしれない、と最大限ポジティブに考えても、僕がトランプ大統領を嫌いな気持ちは変わらないでしょう。大統領としての資質の問題を飛び越えて、もはや彼の人間性に対して、生理的にNO!と僕の魂が叫んでいるのです。アンチ・トランプ派のアメリカ人も、多くは僕のように情緒的に、トランプに対してNO!と言い続けている側面があるのだと思います。

大統領に就任したからといって態度を変える必要はありません。心置きなく、気が済むまで、いつまでもトランプに対してNO!と言い続ける自由はあるのです。

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